「バルバトス。今日は特に予定はなかったと思っているが、間違いないな?」
「ん……」
「仕事も急ぎのモノは無いな?」
「ん……」
「なら、今日はゆっくり休んでおけ」
「そーする……」
無理に大学に顔を見せに来なくていいと髪を撫でながら言ってくる鍾離に行きたくても行けないと心ここにあらずな様子のウェンティ。
まだ余韻が抜けないのかと笑みを苦笑に変え尋ねれば、まだ気持ち良いとうっとりとした声が返って来た。
「んんっ……、あまり愛らしい姿を見せるな。……仕事に行きたくなくなるだろう?」
「だって、しかたないでしょ……。まだおくがじんじんしてるし、からだじゅうぜんぶ、ずっときもちいぃんだもん……」
「っ」
ほぅっと悩まし気にげを吐くウェンティの姿は酷く煽情的で、その色香に当てられた男は息を呑む。
だが、仕事をサボれば他ならぬウェンティからお𠮟りを受けるだろうから、ぐっと我慢だ。
「すまない。加減が出来ず無理をさせてしまったな」
「だいじょーぶ。もらくすがぼくのことだいすきだって、ちゃんとわかってるから」
だから、辛くない。
むしろ幸せだと頬を緩ませ笑うウェンティは、力の入らない手を伸ばし、鍾離の頬に触れた。
「ぼくがきみのものだって、ちゃんとかくにんできた?」
「ああ。お前が俺のモノだと改めて分かって安心できた。……おかげであの義兄弟の話題が出ても暫くは我慢できる」
手を取る鍾離は己の唇にそれを導き、口づけを落とす。
掌への口づけだけでも、いや、手首を掴まれただけでも身体に残った熱は反応するから困ったものだ。
「しばらくって、どれぐらい?」
「そうだな……。三日ほどか?」
「えぇ……みじかくない?」
「そうか? ならその間もお前が俺のモノだと安心させてくれ。そうすれば、もう少しは我慢できるだろうからな」
文字通り朝まで確認したのに、たった三日しか安心できないのかとちょっぴり拗ねるウェンティ。
だが、それが今夜も、明日の夜も、明後日の夜も確認するための布石だと気付いて、バカだなと笑ってしまった。こんな駆け引きをしなくても、愛してやまない恋人に求められれば喜んで応えるのに。と。
まぁ、それを口に出せば自分の首を絞めることになると知っているから言わないのだが。
「ちゃんと『てかげん』してくれる? あしたはだいがく、いきたいから」
「ああ。勿論だ。今夜は無理をさせないと約束しよう」
覆い被さり『証』として落とされる口づけ。
ウェンティはキスの余韻にまた蕩けた表情を見せながらも、
「いってらっしゃい、しょうりせんせー」
と、恋人を仕事に送り出す。
愛らしい恋人の姿に後ろ髪を惹かれながらも、今日も前倒しできる仕事はさっさと終わらせて早く帰ってこようとウェンティにもう一度キスを落とす鍾離。
「行ってくる。何かあればすぐに連絡をしろ」
「ん。わかった」
スマホを手の届くところに置きなおしてくれる優しさにきゅんとする。
手を振り恋人を見送るウェンティは、今日は夜まで大好きな声がが聞けないことが少し寂しいと思いながらも眠りに落ちてゆくのだった。