TREMOLO [ANNEX]

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ずっと二人で…

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「それでね、友達の顔をたてるために顔を出すことにしたんだ」
 なるべく早く帰ると約束した通り、鍾離はいつもよりずっと早い時間に帰宅した。
 上機嫌でそれを出迎えたウェンティは、風呂から食事からと至れり尽くせりで恋人を労った。
 だが、過ぎるサービスに鍾離は違和感を覚えたのか、食後の珈琲を用意していた時に「何かあったのか?」と尋ねてきた。
 別にご機嫌取りのつもりは無かったが、自分の行動はそう見えるかもしれないと反省したウェンティ。
 素直に、自分が思っていたよりも早い帰宅が嬉しかったみたいだと告げれば、昼間散々我慢していた反動か、止める言葉も聞かずに寝室に連れ込まれた。
 其処から日付が変わる今まで散々愛されたウェンティは、恋人の腕枕に身を委ね、愛し合った余韻を堪能しつつ離れ離れの数時間の出来事を鍾離に話していた。
 優しく髪を撫でながら話を聞いてくれる鍾離は優しい。
 その手の動きからも愛されていると実感できるほど自分達は想い合っていると分かるから、向ける笑みは幸せを物語る。
 しかし、ガイアの『失態』のフォローとしてアカツキの創立記念パーティーに出席することになった事を告げれば、愛しげだった眼差しが一変。嫉妬に揺らめいた。
「またあの義兄弟か」
「もう。怒らないでよ。ディルックもガイアも、ただの友達なんだから」
「当たり前だ。友達でなければ連絡を取ることを俺が許すわけが無いだろうが」
「ならどうして怒るのさ」
「友達でも気に喰わんものは仕方ないだろうが」
 二人がビジネスパートナーということは勿論鍾離も理解している。
 理解しているが、それでも恋人が自分以外の誰かと仲睦まじいと知るのはやはり面白くない。たとえ互いに友情しかなくとも。
「そもそも、ベッドで他の男の名を口にするなと忠告しておいたはずだが?」
「『他の男』って、言い方! だから二人は友達だってば!」
「友達であろうがなかろうが今その名を口にするとどうなるか、覚えてはいるようだな」
 頭の下から腕が無くなり、ウェンティを組み敷き見下ろしてくる鍾離。
 嫉妬を隠そうともしない恋人の眼光に、ヒクッと頬が引き攣った。
(これ、もしかして朝まで寝られない感じ?)
 以前同じことをして『お仕置き』された時は、朝まで抱き潰された。
 気を失うことすら許してもらえなかったあの時、自分は誓った筈だ。もう二度とベッドで友達の名前は出さない。と。
 それなのに、自分はどうしてその誓いを忘れてしまっていたのだろうか。
 ウェンティはこれから自分を待つ甘く淫らな『お仕置き』に青褪めながらも笑顔を浮かべ、「ご、ごめんなさい?」と情状酌量を訴える。
 まぁ、それが聞き入れられるとは思ってはいないが……。
「いや。俺も悪かった」
「ほ、ほんと?」
「人は時が経てば忘れる生き物だ。定期的に思い出させてやるべきだったな」
 朝迄コースは回避できた? なんて、ぬか歓びもいいところだ。
「も、モラクス……?」
「安心しろ。また一から教えてやる。ベッドで俺以外の名を口にしたらどうなるか。じっくりと、な」
 それはそれは楽し気に笑う鍾離。ウェンティが逃亡に失敗したのは、言うまでもないだろう。



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2024-12-20 公開



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