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「付き合ってもらうかどうかは、君がボクに声をかけた理由によるかな?」
ウェンティは手入れしていたライアーを片すとタルタリヤに向き直り笑顔のまま尋ねた。さっきのは単なるナンパかな? と。
少年らしい人懐っこい笑み。だが、中身は数千年という永い歳月を生きる元風神。対峙しているだけで薄気味悪さを覚えるのは、己の経験故だろうか。
タルタリヤは「参ったなぁ……」と困ったような声を漏らして頭を掻く。ウェンティは尚も笑っている。
「狙いは鍾離先生で間違いようだね」
「風神様には何でもお見通しってわけか」
「まさか。ただちょっとだけいつもと違う風だったから気にしていただけだよ」
内容が内容なだけにあまり他者に聞かれたくないのだろう。ウェンティはタルタリヤを誘導するように人通りの少ない路地へと足を進めた。
あっさりと背を向ける少年の後姿に、タルタリヤが抱くのは少年自身への興味だ。
昔、神の心を集める命を受けた際、岩神か風神かを選ぶ機会があった。その時は七神の中で最も力のない神として名が挙がっていた風神に興味を持てず、風神に因縁があるとか言っていた淑女シニョーラに丸投げしたほどだ。
弱者に興味はない。それは今も変わらない。だが、力という意味では弱者でも、底知れぬ何かが目の前の少年にはある。
本能的に感じる『強者』の風貌。
予想外の出会いにタルタリヤの瞳孔は開き、口角は無意識に持ち上がった。全く眼中になかった相手が『獲物』に変わった瞬間だ。
「それで、鍾離先生に何の用が――――」
人気のない場所に辿り着き、用件が聞きたいと振り返るウェンティ。彼の言葉を遮るのは、その頬を掠めた一矢。
遅れて走る痛みに手を当てれば、指先に生温い何かが触れた。
ウェンティの視線は矢が飛んできた方向へと注がれる。視線の先には弓を引いた状態で薄く笑うタルタリヤの姿があった。
「ねぇ、これって何のつもり?」
「人気のない場所に誘導しておいてその質問が飛んでくるとはね。俺の事は鍾離先生から聞いているんだろう?」
聞いていたからこそ、自分が『誰』を『なんのため』に探していたか瞬時に理解し、彼から『危険』を引き離したんだろう?
楽し気に笑いながらも感情の消えた眼光を向けるタルタリヤ。ウェンティの表情に見えるのは明らかな緊張だった。どうやら彼はこの状況は想定していなかったようだ。
「風神様が戦況を読み違えるとは意外だな」
「起こってないものを読み違えるもないでしょ」
先程までの笑顔から一転して睨みつけてくる少年の眼光には怒りが滲む。
周囲は無風だったはずだがその緑髪が一房ふわりと舞い上がりを見せ、次の瞬間少年の周囲にだけ風域が現れた。
風を纏うその姿に早くなる己の鼓動を感じ、タルタリヤは目を見開き最高だと笑った。
「いいねぇ。最弱とはいえ、流石は風神様。楽しくなってきたよ」
「ボクは全然楽しくないよ。遊びたいなら一人で勝手に遊んでてくれないかな」
「分かっていないな。命懸けの遊びが最高に楽しいんじゃないか!」
是非とも俺を楽しませてくれ!
そう高々に声を上げたタルタリヤに向けて放たれるのは風を纏った幾本の弓矢。先程までは手に無かった弓矢を片手に追撃を駆けるべく狙いを定めているウェンティの姿にますます心が躍った。
タルタリヤは迫りくる矢目掛けて己もそれを放ち、何本かを撃ち落とす。迎撃しきれなかった矢は眼前に迫り、寸でのところで躱すと視界の端に鈍色の光を捉えた。ウェンティが放った追撃だ。
体勢的に弓で撃ち落とすことは困難。もう少し弓で遊べるかと思っていたが、相手を見くびりすぎていたようだ。
タルタリヤは弓から手を離す。当然弓は重力に従い地面へと落下するのだが、大地に転がる前にその形は消えてしまった。
更なる追撃に行動を移していたウェンティはタルタリヤの様子に「しまったっ」と短い声を漏らす。彼が本来弓を得意とする戦士ではなかったと思い出したのだ。
「さて、風神様のお手並み拝見と行こうか!」