TREMOLO [ANNEX]

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狂戦士の誤算Ⅱ

27



「いきなり仕事場に乗り込んできて『もう会うな』って脅された俺の気持ちを分かってくれてありがとう、ウェンティ君」
「それについては今謝ったじゃないか」
「あはは。だよね、ごめんごめん。しつこい男と嫉妬深い男はダメだよねぇ?」
「公子君っ!」
 絶対わざとでしょ!?
 そう睨んでくるウェンティにタルタリヤは声を響かせ笑い、軽口の応酬を楽しんだ。
 本当にしつこいと怒られたのは、それからしばらくして。
 もう良いと機嫌を損ねて立ち上がり歩き出すウェンティを追いかけ隣を歩く青年は、その首筋に咲いた痕が薄くなっている事にまた笑った。
「流石鍾離先生だ。ちゃんと『約束』守ってくれてるみたいだね?」
「そりゃ自分から持ち掛けた勝負で負けておいて約束まで反故したら、それこそ最低じゃないか。……って、なんで守ってるって分かったのさ?」
「ん? そりゃウェンティ君の首筋にいつも残ってる先生のマーキングが薄くなってるからかな?」
「!!!」
 訝しむ少年ににやりと笑い教えてやる。この一ヶ月、ずっと綺麗なキスマークが咲いていたよ。と。
 その言葉にウェンティの顔は面白いぐらいに真っ赤に染まり、恋人の残した痕を隠すように首元を両手で覆い隠した。
「っもぉ……! 見えるところはダメだって言ってるのに……!」
「へぇー、つまり見えないところはもっとすごいんだ?」
「ちが―――っ」
「はいはい。ラブラブご馳走様。二人の惚気はもうおなかいっぱいだよ」
 弁解は要らないよと笑えば、何か言いたげに口をパクパクしているウェンティ。
 だが、何も言葉が見つからなかったのか、赤い顔のまま項垂れて「君って本当、良い性格してるよね……」とため息を吐いた。
「そう? 一方的に友達を取り上げられそうになったんだし、これぐらい可愛い反撃じゃないかな?」
「言いたいことは分かるけど」
「絶対勝てないだろう戦いで無理矢理『約束』させられたんだし、鍾離先生にもそれなりの『リスク』が無いとフェアじゃないでしょ?」
「それは、そうだけど……。でも―――」
「『ひと月ウェンティ君との接触禁止』は、君にも酷だったかな?」
 恨めし気な眼差しに言いたいことを汲み取って代弁してやれば、言葉を詰まらせる風神様。
 本当、ラブラブで嫌になる。
 タルタリヤは肩を竦ませ「まだ一日目だから頑張ってね」とウェンティの肩に手を乗せ良い笑顔を見せた。
 風神様は拗ねたような不機嫌な顔を見せるも、「約束は約束だから」と脱力する。
 苛め過ぎたとちょっぴり可哀想になったのだろう。タルタリヤはごめんと謝り肩から手を離すと、恋人とラブラブな友人の惚気話とことん付き合ってやろうじゃないかと港町へと繰り出した。
 揶揄われたことに機嫌を損ねながらも軽口を言って笑うウェンティにはどうかこのまま何も知らないでいて欲しい。
 そんなことを考えながら青年は大切な『友人』として少年の隣を歩き、嫉妬深いもう一人の『友人』の逆鱗に再び触れてしまった時のために鍛錬を再開しようと密かに思っていたとか。






[終]





2024-03-28 公開



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