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「お疲れぇ! 鍾離さん!」
「胡堂主。職務中に何をしているのか、聞かせてもらえるだろうか?」
威圧に怯みそうになっただろう胡桃の精一杯の明るい声。
彼女の緊張を知りながらも圧をかけつづける男は、どう見ても『穏やかな鍾離先生』とは程遠い。
このままでは胡桃が第二のタルタリヤになってしまう。
身体の異変を感じながらも気丈に振舞うウェンティは、牽制を込めて恋人の名を呼んだ。
「約束、忘れたのかい?」
「っ、忘れてなどいない。ただ、仕事をサボっている堂主に苦言を呈しただけだ」
苦しい言い訳だということは本人も分かっているのだろう。
視線を逸らす鍾離に、ウェンティは小さくため息を吐いた。
「胡桃、仕事の邪魔をしてごめんよ」
「いやいや。声を掛けたのは私だからね。……鍾離さん、そんなに睨まないでくれるかなぁ?」
「睨んでなどいないが?」
「鏡を見てもそう言えるのかな?」
嫉妬を浴びることはこれが初めてではないため、いなすのも慣れたもの。
肩を竦ませる胡桃はジッと鍾離を見つめると、わざとらしくため息を吐いた。
「鍾離さん、少し早いけど休みに入ってくれていいよ」
「何を―――」
「特に急ぎの仕事も無いし、二、三日前倒されてもこっちは大丈夫だから」
「だが―――」
「なにより、気分はもう旅行先に行っちゃってるみたいだし?」
違うとは言わせないよ?
そんな視線を向けてくる胡桃に鍾離は閉口する。
思い当たる節があるのだろう。いや、むしろ思い当たる節しかないのだろう。
彼が集中力を欠いていた理由でもあるウェンティも同じく責められている気がして居心地が悪かった。
「すまない」
「いいよいいよー。二人が仲良しだってことはよーく知っているから!」
本当、ものすごく、璃月一と言ってもいいぐらい知っているから。
満面の笑みを向けてくる胡桃。
きっと彼女からすれば、この提案は善意以外何物でもないのだろう。
しかし、発情期を間近に控えた鍾離からすれば、要らぬ世話としか言えなかった。
「申し出は、ありがたい。だが、責務は全うさせてはもらえないだろうか?」
「えぇ? 良いの? てっきり直ぐ帰るぐらい喜ぶかと思ったのに!」
(うん。いつもなら、そうだろうね)
胡桃が驚くのも無理はない。
いつもならば、仕事が早く終わればいそいそと帰宅する程彼はウェンティとの時間を大切にしているのだから。