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昼間の様子から鍾離が何かを企んでいる事は分かっていた。そしてそれがどういった類の企みであるかということも、なんとなく分かっていた。
だからこそ今日の夕食は幼子が安眠できるよう特に気を配ったわけだが、当人はともかく、恋人には期待していることがバレてしまっているようだ。
帰って来てからずっと上機嫌な様子の鍾離にモラクスは気味が悪いと悪態を吐いていたが、あからさまな挑発の言葉にも機嫌を崩さず対応されれば、不気味さが限界を超えてしまったのだろう。怯えた様子で食事をとっていたから。
どう頑張っても『和やかな雰囲気』にはならないかと苦笑いが絶えないウェンティだったが、それを口に出すことはしなかった。
今日はとにかくモラクスを深い眠りに誘わなくてはならないから、下手に興奮させたくなかったのだ。
そんな思惑にも気付いていないモラクスは、食事の後は湯浴みを済ませ、リラックス効果のある茶を淹れてやればほうっと安堵の息を吐きながらそれを飲んでいる。
「美味しい?」
「ああ、悪くない味だ……」
「よかった」
見たところ警戒をしている様子はない。むしろ心を許しているとさえ思える。
きっと今日はよく眠れることだろうと思惑通りことが進んでいる事に安堵しているのか、鍾離程ではないにしろウェンティも機嫌良く幼子が眠るまでの時間を過ごすことが出来た。
お茶を飲み終えたモラクスは程なくして堪えきれない欠伸を零し始め、数回目には眼を擦りながら立ち上がると「休む」と短い言葉を残して客間へと下がって行った。
笑顔で幼子を見送ったウェンティは、残された湯呑みを片付けるためキッチンへと足を向けた。
その背後には、誰かの気配。
「……もう少し待ってよ?」
「分かっている」
「『分かっている』とは思えない態度なんだよなぁ」
キッチンに辿り着いたウェンティが湯呑みを洗っていれば、腰に巻きついて来る逞しい腕。
包み込むように抱きしめられ、頭上には口づけを落とされ、とてもじゃないが『待っている』とは言えない態度だ。
「お前を抱きしめることすら許されないのか?」
「そうじゃないけど……」
言葉は窘めたウェンティを責めているかのように感じる。だが、声色はそこはかとなく甘く穏やかで、彼の機嫌の良さを物語っていた。
洗い終えた湯呑みを置いて水に濡れた己の手をタオルで拭くウェンティの表情に浮かぶのは、苦笑い。
だが、何処か幸せそうに感じるのは、やはり恋人と触れ合うことが嬉しいからだろう。
「さっきからずっと君の『利かん坊』が当たってるんだけど?」
「番と触れ合っているのに興奮するなと?」
「じゃなくて、わざと当ててるでしょ?」
ウェンティが天井を仰ぐように上を向けば、にやりと意地悪く恋人が見下ろしてくる。
やっぱり故意だったのかと苦笑を濃くすれば、身を屈めた鍾離の唇が重なった。
「お前から誘われると思っていなかったからな。どうにも抑えられん」
少々強引な手を使うしかないと思っていたが嬉しい誤算だ。
そう言って笑う鍾離の表情はそれはもう嬉しそうなものだった。