テイワットに存在する七国にはそれぞれ神がいる。
彼らは七神と呼ばれており、それぞれの国には彼らへの信仰を示す七天神像が存在しており、それは各所で神に代わり民を見守っていた。
テイワットに降り立った空が初めて目にしたのはモンドの神――風神バルバトスを模した七天神像で、名前とは裏腹にとても愛らしい姿をしていると思ったものだ。
その後はモンドの隣国璃月では岩神モラクスの七天神像を。
大海原を越えた先に栄える稲妻では雷神バアル――正確にはバアルゼブルだが――の七天神像を。
雨林と砂漠という相反する大地を有するスメールでは草神ブエルの七天神像を。
美しい水の都であり芸術と正義を重んじるフォンテーヌでは水神フォカロルスの七神像を、それぞれ見てきた。
いずれの国でもそれぞれの神の姿を模した七天神像は厳かでいて神々しさを感じたものだ。
まぁ、七天神像となった当人達はかなりユニークだったが、それは自分の胸にだけ留めておこう。
「ふぅー。やっと此処まで来れたぞ。やっぱりスメールの砂漠地帯からモンドは遠いなぁ」
「そうだね。でも、望舒旅館もさっき通り過ぎたし、あと少しだからもう少し頑張ろうか」
「おう! 今日は久しぶりに鹿狩りでおなかいーっぱい食べるって決めてるからな!」
先程までの疲労困憊といった様子から一変して、瞳を爛々と輝かせて鹿狩りへと想いを馳せているだろうパイモン。
これを笑うなという方が無理だろう。
空は素直な相棒に声を出して笑いながら、先を急ごうかと石門を目指した。
見えてきた橋を渡れば、そろそろ荻花洲に佇む岩神モラクスの七天神像が見えてくるだろう。
其処を通り過ぎれば石門は直ぐだ。そして石門を越えれば、長らく訪れていなかった風の国・モンドに入る。
思い出すのは、始まり。離れ離れになってしまった片割れを探す旅は、彼の地から始まった。
立ちはだかる困難と謎に翻弄されながらも今自分ができる精一杯で歩みを続けている空は、いつかこの旅も終わるのだろうと博識な男性の姿を思い出した。
まもなく見えてくるだろう七天神像のモデルとなった岩神モラクス。
今は神の座を辞して凡人として璃月港で暮らす謎多き男性は、おそらく自分がまだ辿り着けていない真実をも知っているのだろう。
様々な場面で助力してくれる彼の『秘密』を歯痒く思いながらも、それでも彼の意思を尊重するのは敬愛を示してのこと。
自分が窮地に陥ると分かっていながら手を差し伸べることをしないという薄情者ではないと信じているからこそ、自分の足で歩むことができるのだ。
「パイモン。急いでる所悪いけど、久しぶりに七天神像に祈っても良いかな?」
「おう! 勿論だぞ! そういえばここ最近フォンテーヌの七天神像にばかり祈ってて他の七天神像のことを忘れてたしな! しょう―――岩神モラクスもきっと喜ぶぞ!」
「はは。そうだね」
荻花洲の七天神像で岩神モラクスへ祈りを捧げた後は、モンドで風神バルバトスに祈ろうと提案すれば気持ち良いぐらいの快諾が返ってきた。
「即答だね?」
「だってそうじゃないと『鍾離ばっかり!』って吟遊野郎が拗ねそうじゃないか?」
「どうかな? ウェンティはそういうの気にしないと思うけど」
「いーや! あいつはどうしてか鍾離が絡むと面倒臭いから絶対拗ねると思うぞ!」
普段から面倒なのに、輪をかけて面倒臭くなるから此処は平等にしてやらないと!
そう自己完結しているパイモンに空は苦笑を漏らし、訂正しても聞き入れられることはないだろうと察して早々に説得を諦めた。
(ただ単純に慌てる俺達を見るのが楽しくて揶揄われているだけだと思うけどな)
まぁ、本気にせよ冗談にせよ絡まれると面倒臭いことには変わらないから、わざわざ無駄な労力を使うこともないということだ。