TREMOLO [ANNEX]

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七天神像と感覚が繋がっている岩神の話



 石橋を歩いていれば、見えてくる神像。
 それはこれまで見てきた他の国の神像と一線を画す出来栄えで、彼が持つ神々しさと雄々しさを見事に表現した荘厳な出来栄えだ。
 岩神と旧知の仲の風神曰く、『昔のやんちゃな頃の彼らしさも残されていて実に素晴らしい像だよ!』とのこと。
 それは嫌味ではないかと二人の不仲を心配したのは、確かあの頃からだった気がする。
 そんな過去を思い出していれば、「あ」と隣から驚きの声が聞こえた。
 ふよふよと浮かんでいる相棒が視界から消えそうになり慌てて立ち止まる空は、「どうかしたの?」とパイモンを振り返った。
「えっと……、あれってオイラの見間違いじゃなければ、吟遊野郎、だと思うんだけど……」
 パイモンが指さす方向には確かにウェンティの姿があった。
 彼は自由気ままに各地を放浪している吟遊詩人様だ。自国モンド以外の所でその姿を見かけても、何ら不思議ではない。
 しかし、そんな彼を見てパイモンが狼狽しているのは、ウェンティが立っている場所のせいだ。
 其処は自分達が今まさに向かっている荻花洲を守る岩神モラクスの七天神像の前で、距離があるためはっきりとは分からないが、それでもその像を見上げている事だけは分かった。
 熱心に岩神モラクスの七天神像を眺めているようにも見えるその姿に、空とパイモンは顔を見合わせた。
 何故ウェンティが岩神モラクスの七天神像を食い入るように見つめているのか、その答えを求めるように。
 勿論当事者でない空とパイモンに答えなど分かるわけがない。二人にできることと言えば、精々推測だけだ。
 パイモンは顎に手を当て、考え込むポーズを見せる。
 空も同じく顎と腰に手を当てお決まりのポーズで考える。
 二人が出した推測は、いかに?
「……まさか吟遊野郎の奴、岩神モラクスの七天神像に落書きでもするつもりか?」
「やっぱりパイモンもそう思った?」
「旅人も同じ考えか?」
 考えられる可能性の中で、一番しっくりくる推測はどうやら同じだったようだ。
 流石相棒だと肩を抱いて笑い合い所だが、それをするのはウェンティを止めてからがいいだろう。
 いくら長い付き合いの友人とはいえ、国で崇拝されている神の像に悪戯をするのは流石にやり過ぎだ。
 璃月の人々からすれば、モンドの吟遊詩人のおふざけを冗談だと笑って許すことなどできるわけがないだろうから。
 下手をすれば、処罰の対象になるだろう悪ふざけを早く止めなければ。
 ウェンティが岩神モラクスの像に悪戯をする気だと結論付けた二人は、再び顔を見合わせ、深く頷いた。
 走ればきっと間に合うはずだ。と、空が大地を蹴って駆けようとしたその時、七天神像をジッと見上げていたウェンティが動きを見せた。
 きょろきょろと辺りを見渡す姿は、人の気配がないことを確認しているのだろう。
 思った通りだと駆ける空。パイモンもそれに続き、友人が他国で罪を犯すのを何とか止めようと急いだ。
 だがしかし、背中に羽が生えたかのように風の力でふわりと飛んだウェンティが見せた行動は、二人が想像していたモノとは全く違う――むしろ真逆のモノだった。



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2024-04-18 公開



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