TREMOLO [ANNEX]

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ずっと二人で…

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 駐車場に辿り着けば当然のように助手席に座らされるウェンティ。
 それを当たり前だと思いながらも、人目を気にして後部座席に移った方が良くないかと尋ねるのは彼の立場を気にしてのことだった。
 だが、尋ねたウェンティに返されたのは「気にし過ぎだ」という苦笑いだけで、そのままドアを閉められてしまう。
 運転席に移動する鍾離を目で追いながら(気にするに決まってるでしょ!)と心の中で反論するも、彼に伝えることはしない。
 何故なら彼がそれを喜ばないと知っているからだ。
(本当、モラクスってばボクの事大好きなんだから)
 仕方のない恋人を想い笑みを浮かべていれば、車に乗り込んだ彼から何を笑っているんだと尋ねられてしまった。
 きっと誤魔化せば拗ねてしまうだろう恋人に、ウェンティは自分が感じたままを言葉にして伝えてみる。彼はどんな反応を見せるだろうか? と。まぁ、おおよそ想像はできているのだが。
「今更何を当たり前のことを言っているんだ。愛していると毎日伝えているだろう?」
「だよね。そういう反応すると思ってた」
「? 何か問題があるのか?」
「ううん。全然。むしろ、嬉しい。ボクもモラクスの事大好きだから」
 此処が家なら、今すぐ君の膝の上に座ってその精悍な顔中にキスの雨を降らせるのに。
 そう言って笑えば、惜しいことをしたと苦笑を漏らす鍾離は今夜是非頼むと言って車のエンジンをかけた。
「キスだけでいいの?」
「それから先は俺がすることだろう?」
「そうだけど、偶にはボクもモラクスの事可愛がってあげたいんだけど?」
 いつもいつも彼の全てで愛され蕩けさせられ、彼が齎す快楽を享受することしかできないウェンティ。
 それはそれで幸せなのだが、偶には自分が齎す快楽に整った顔が歪む様を見たいと思ってしまう。
 いつぞやに奉仕した際には大いに喜んでくれたはずなのに、何故あまりさせてくれないのだろうか?
(もしかして、ボク、下手だった……?)
 自分の記憶では、喜び興奮してくれた鍾離にいつも以上に激しく求められて翌日ベッドから起き上がることが困難だったはず。
 だからてっきり下手ではないと思っていたのだが、まさかその認識が誤りなのだろうか?
 途端不安になるウェンティ。
 だが、巧くなりたいと思っても練習が出来なければ無理な話だ。何故なら、練習相手も鍾離以外考えられないのだから。
(他の人となんて、絶対嫌だ)
 そもそも他者に触れられることが大嫌いなウェンティは、想像しただけでも寒気がすると身震いした。
 触れられて平気なのは、嬉しいと感じるのは、鍾離だけ。彼しか要らないし、彼だけ知っていれば十分だ。
 しかし、そうなるとどうしても上達は困難になる。練習をしようにも鍾離にそれを拒まれればどうしようもできないから。
 本当は自分も鍾離に触りたいと思うウェンティだが、自分の心を偽ってまでそれを押し通そうとは思わない。
 また今度、良い雰囲気になった際に触らせて欲しいとお願いしてみようと自分を納得させる彼は、話題を変えるために「それより、何を食べようか?」と笑顔を見せた。



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2024-02-17 公開



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