TREMOLO [ANNEX]

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狂戦士の誤算Ⅱ

10



「鍾離先生の嫉妬心を煽って怒らせたいんでしょ?」
 顰め面のままウェンティが口にしたのはおそらく彼が言う『やり方が汚い』内容なのだろう。
 それを聞いて、なるほどと納得するタルタリヤ。どうやら自分が思っているよりもずっと鍾離は不機嫌なようだ。と。
(まぁ、そうだよね。普通に考えてただの友人でも恋人が頻繁に自分以外の誰かと食事に行くなんて面白くないだろうし)
 恋人という存在が居たことは無いが、聞いたことはあるから理解できる。
 しかし、ウェンティが言う意図は全くないから其処は訂正しておかないと。
「何度も言ってるけど、俺は本当に鍾離先生を挑発しようなんて考えてないよ」
「ならどうして毎日ボクを誘うのさ?」
 そんな風に言うなら誘いに乗らなければいいのに。
 なんて思うものの、ならもう誘いに乗らないと言われると困るから言葉を飲み込むタルタリヤ。
 苦笑交じりにこれも何度も伝えているだろう『理由』を口にした。
「だから、ただ単純にウェンティ君と仲良くなりたいだけだって。それ以上の理由は無いからそんな風に睨まないでよ」
「その言葉を信じられればいいんだけど」
「信じてよ。お願い! お願いします!」
 優しい風神様なら願いを叶えてくれるでしょ?
 最後に小声で付け足せば、呆れ果てただろうウェンティがガックリと肩を落としていた。
 おや、この『お願い』の仕方は不味かっただろうか?
 不安を顔に出してウェンティの様子を窺うタルタリヤだが、その表情は悪戯をして母親に呆れられた子どもの表情と酷似している。
 テーブルに肩肘を吐いてため息を吐くウェンティは、
「本当にボクと友達になりたいだけ? 鍾離先生に『迷惑』をかける為じゃなくて?」
 と、言葉の信憑性を伺ってきた。
「本当にウェンティ君と友達になりたいだけ。岩王帝君に誓って嘘は吐かないよ」
 心臓の鼓動を感じる胸元に左手を添えると、右手を挙げて宣誓するタルタリヤ。もしも鍾離先生と戦うことが目的だった場合、喜んで罰を受けるよ。と。
 真っ直ぐウェンティを見つめる蒼い瞳に揺らぎはない。それは言葉が本心である確固たる証だった。
 ウェンティは暫し蒼を見つめ返す。
 だが、どんな理由があろうと公衆の面前で他の男と長々見つめ合うわけにはいかないのだろう。
 視線を外した少年は、「分かった」とため息交じりで承諾をくれた。
「他の人達はともかく、鍾離先生にはボクからきちんと説明しておくよ。『遠路はるばるスネージナヤから仕事に来た公子君は知り合いがいなくて淋しいだけだよ』ってね」
「ああ、お願いします!」
 ありがとうと笑みを返せば、面食らったような顔をするウェンティ。
 嫌味を混ぜたのに気付いてないの? とご丁寧に暴露するあたりやっぱりこの少年は優しい性格だ。



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2024-03-08 公開



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