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狂戦士の誤算Ⅱ その後の話

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 反論の口を噤み、許しを乞い項垂れる鍾離からは普段の雄々しさなど微塵も感じない。それどころか弱々しいとさえ思う始末だ。
 目の前で反省し落ち込まれてはこれ以上責めることは出来ない。
 自分の甘さに溜め息を吐いたウェンティは「選んで」と、鍾離に究極の二択を迫った。
 タルタリヤに頼んで『条件』の緩和を求めるか、それとも、『契約』が完遂される日まで離れて暮らすか。
 この二つ以外にも良い案があるかもしれないが、考えることに時間を費やしてこれ以上ストレスを増やすことは得策ではない。
「…………公子殿に、『条件』の緩和を頼んでみる」
「ん。分かった」
 提示された選択肢のどちらも選びたくないという意思は存分に伝わった。
 それでも断腸の思いで選んだのは、ウェンティの傍に居たいと願うものだった。
(あー、もう……、ボクってばチョロすぎるよ)
 『離れて暮らす』ことはもう耐えられない。
 そんな想いを愛してやまない恋人から受け取れば、誰だって悦びを覚えてしまうモノだろう。
 だから先程の八つ当たりも全部許してしまう。だって鍾離が大好きだから。
「今の時間なら公子君、まだ北国銀行に居るかな?」
「さぁ……どうだろうな……」
 不貞腐れている鍾離は新鮮だ。
 『面白くない』と表情で語る恋人にウェンティは苦笑いを漏らした。
 こういうことは早く済ませた方が良い。
 ウェンティは鍾離の傍に向かように足を進めた。
 勿論、彼に触れるためではない。彼の背後にある玄関を出てタルタリヤが務める北国銀行へと向かうためだ。
 鍾離の隣を通り過ぎ、家を後にするウェンティ。
 すれ違う時に鼻孔を擽った恋人の香りに胸が締め付けられたが、もう少しだけ耐えなくては。
 少し歩いたところで後ろを振り返れば、案の定鍾離の姿が。
 人目があるため弱っている姿を隠ししゃんとしているが、それでもその足取りは重かった。
 まるで足枷を付けられた罪人のようにのろのろと歩いているのはせめてもの抵抗なのだろう。
 子供染みた振る舞いだと呆れてしまうが、ウェンティだって彼の気持ちが全く分からないわけではなかった。
(ボクだって本当ならこんな風に無理強いしたいわけじゃないんだから)
 だがそれでも、鍾離が大切だから心配していることは分かってもらいたい。



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2025-09-03 公開



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