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(あ……、モラクスの笑い顔、久しぶりに見た気がする……)
恋人にときめき過ぎたせいで胸が苦しい。
しかしそれは仕方のないことだ。
この一週間、鍾離が見せる表情と言えばどれも苦しげなものばかりで、こんな笑顔を見ることが無かったのだから。
だからつい、甘えたくなる。此処が往来の場であるにも拘らず。
「! ……随分と愛らしいことを」
「だって仕方がないじゃない。ボクだって君の事、愛しているんだから」
「出来ることなら今すぐ『契約』を破棄してしまいたい」
「それは駄目だよ。君が持ち出した『契約』なんだから」
「分かっている。…………ウェンティ、もう少し傍に来てくれ」
「ん……」
恋人の上着を握りしめ寄り添っていれば、髪に掛かる吐息。
自分からは抱きしめることが出来ないから。と、願う鍾離に、ウェンティは広い背に手を回し抱きついた。
「…………嬉しい」
「何がだ……?」
「こうやって君に触れることが出来ることが嬉しいな、って。……当たり前になり過ぎていて、忘れていたよ」
熱い胸板に頬擦りをして愛しい存在を確かめるウェンティ。
頭上から鍾離が息を呑む音が聞こえたが、彼が欲望に耐えていることは分かっていたから気付かないふりをした。
(ここ最近幸せ過ぎて、この世界に『当たり前』なんて無いって、忘れていたなぁ……)
闘いの日々は終わり、平穏が訪れた世界。
しかしそれでも『永遠』は存在しないのが理だ。
だからこそ、今ある『幸せ』に感謝して日々を大切に過ごさなければならない。
それを誰よりも知っていたはずなのに、あまりにも穏やかで幸せな毎日にすっかり忘れてしまっていた。
ウェンティは幸せ惚けして忘れていた『感謝』を思い出したと笑い、この一月を自分達への戒めにしようと微笑んだ。
「ああ……、そうだな……。お前が今此処に―――俺の腕の中にいることが『当たり前』になっていた……」
自由を愛し、自由を求める『風』を掴まえた気になっていた。
そう言って笑う鍾離の笑みは何処か寂しげだった。
ウェンティは恋人を見上げ、右手をその頬に添えた。
「ボクはいつだって自由だよ。自由に帰る場所を選んでいるんだ」
「ああ。分かっている」
「でもね、もう帰る場所は一つだけ。此処が―――君の隣がボクの帰る場所だって決めているから、そんな顔をしないで?」
『永遠』は存在しない。でも、限りなくそうで在りたいと思う。
そう言って笑うウェンティは鍾離のループタイを引っ張り身を屈めてと促した。
抗うことなく望みを叶えてくれる鍾離の唇に唇を重ねたウェンティは綻ぶ花のように幸せそうに笑った。
「愛してるよ、モラクス」
だから君も同じように笑ってよ。