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いつもの鍾離なら腕を掴んで止めてきただろう。
それなのに、まるで触れる事を躊躇うようなその素振りを見せられれば、何が起こっているか分からないウェンティにとっては不安しか感じなくて当然だろう。
「何その態度……」
「す、すまん」
「もういいよ。そっちがそういう態度をとるなら、勝手にすれば?」
自分はただ恋人を心配していただけなのに、こんな風に扱われるなんて意味が分からない。
ショックを隠さないウェンティは踵を返し、タルタリヤの後を追いかけるかのようにその場から立ち去ろうとする。
それに焦った鍾離は「バルバトス、待て!」と声を荒げた。ウェンティはその声に振り返ることは無かったが、足は止まって安堵する。
追いかけるように駆け寄る鍾離。
背を向けたままのウェンティは、止めても無駄だと声を震わせていた。
「モラクスが教えてくれないなら公子君に聞くしかないでしょ」
涙声のような音に、焦る。
肩を掴んで此方を向かせたいところだが、ここでも『契約』が邪魔をする。本当に禄でもない『取引』をしてしまったものだ。
後悔先に立たずだと自分の短慮さを悔いながらも、鍾離は小さく息を吐き、隠さず全てを話すことをウェンティに伝えた。
「……本当に?」
「ああ。約束する。お前に隠し事はしない。……だから、頼む。此方を向いてくれ」
我ながら情けない声色が出たと思う鍾離だが、格好をつけている場合ではないと理解しているから必死に懇願する。
それが伝わったのか、ウェンティは半歩足を下げ、鍾離と向き直る。
安堵したのも束の間、僅かに涙目になっている恋人にぎょっとした。
いや、自分が傷付けたことは理解しているのだが、まさか此処までとは思っていなかったのだ。
鍾離は慌てて愛おしい存在を抱きしめようとした。が―――。
「嗚呼! くそっ!!」
「!! な、何っ?」
抱きしめる寸前――触れる寸前でまた思い出す『契約』。
鍾離は伸ばした腕を引っ込めて、普段の彼らしからぬ苛立ちを吐き捨てた。
忌々し気に吐き出される言葉にウェンティはびくりと肩を震わせ怯える。それに慌てて「違う! お前は関係ない!」と声を荒げ弁解する鍾離。
一体何が恋人をこんな豹変させているのか分からないと顔を歪めるウェンティに鍾離は肩を落とし、これが自分に科された『条件』であることを伝えた。
「え……? 何が……?」
「……お前にひと月触れるな」
「え??」
「だから、公子殿が出した条件だ。『恋人にひと月触れるな』。それが先の手合わせで俺が負けた場合の罰則だ」
実に忌々しい内容だが、『契約』は『契約』。自分はそれを遵守しなければならない。
そう言って項垂れる鍾離は、自分が短慮だったとウェンティに謝罪した。