TREMOLO [ANNEX]

ゆらゆらぎが運営する同人系個人サイト

あなたは18歳以上ですか?

18歳未満の方の閲覧を固くお断りいたします。

  • Yes
  • No

狂戦士の誤算Ⅱ その後の話



「えっと……、つまり、もうそれは始まってるってこと?」
「そうだ。立ち去る時に言っていただろう? 『忘れるな』と」
「あー……。言ってたね、確かに」
 思い返せばそんなことを言っていた気がする。
 過去を回想するウェンティは、なるほどと納得した様子だ。己の目尻を拭うのは、涙目になっていると気付いたからだろう。
 安心したと言わんばかりに息を吐くと、「本当、馬鹿じゃないの」と悪態を吐く。まぁ、当然だろう。自分でもそう思うのだから。
「まさか勝負に負けると思っていなかったんだ。……そもそもお前があんな条件を追加してこなければ―――」
「人のせいにしないでよ。ボクは何も聞いてなかったんだから、むしろアレは当然だと思うけど?」
「うっ……、それは、そうだが……」
 タルタリヤにどれほど実力があろうとも、鍾離との力の差は歴然だ。
 それを誰よりも知っているウェンティが勝負を知って止めに入ってこないわけがない。
 だからこそ全て片が付くまで黙っていようと思っていたのだが、バレた時点で計画は破綻していたということだろう。
 鍾離は責める言葉を発したことを素直に謝り、頭を抱えて大きなため息を吐いた。
「どうしたの?」
「いや……、正直、拷問のようだと思ってな……」
「何が?」
「お前に触れないことがだ」
「! な、何を深刻な顔して言うかと思えば! バカじゃないの!!」
 心配して損した!
 そう言って手を振りかざし殴ろうとしてくるウェンティだが、ぴたりと動きを止めてしばしの沈黙が二人の間に流れた。
「……これって、ボクが君に触ってもダメかな?」
「そうだな。正直、お前から触れられることに関しては許容してもらいたいが、公子殿は『俺から』触れるな。ではなく、単に『触れるな』としか言っていない。つまり、……つまりお前からも契約違反になるだろう」
「えぇ……そんなぁ……」
 嘘でしょ? と言わんばかりの顔で肩を落とすウェンティに鍾離は言い訳の仕様もないと再び謝り、何とも気まずい沈黙が二人の間に流れた。
 荒野は見通しが良く、天気も良好。そんな中で互いを見つめ合って佇む二人は、息をぴったりに「はぁ……」と肩を落とし、とりあえず家に帰ることにしたのだった。
 その道中、巻き込まれただけのウェンティはやっぱり理不尽だと頬を膨らませて怒っていて、その怒りを受け止める鍾離は随分可愛いことを言ってくれるものだと思ったり。
 あまりにも怒るものだからついつい笑みが零れてしまって、それには何を笑っているのだとまた怒られた。
 だが、どうしたって仕方ない。当の本人は無自覚だろうが、そうやって怒ると言うことはつまり―――。
「いや、そんなに俺に触れたいと思っているとは思わなくてな」
 勿論鍾離はウェンティに触れたいと常々思っているのだが、まさか同じように恋人が思っているとは思わなかった。
 これは嬉しい発見だと不幸中の幸いだと喜ぶ鍾離に、ウェンティは顔を真っ赤にして強風を生み出し少し過激な照れ隠しをしたのだった。



 | 


2024-05-09 公開



Page Top