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狂戦士の誤算Ⅱ その後の話

25



―――― 21日目


 限界だった。
 毎日顔を合わせる度にハグをしてキスをしていたが、それだけでは満たされなくなってしまったのはここ数日の事だった。
 鍾離と目が合う度に体躯は火照り、ハラが疼いて仕方がない。
 明らかに普通と違う己の状態。
 心当たりがあることは幸いだが、せめて後一週間と数日、『約束』の期日まで待って欲しかった。
「モラクス、もう、我慢できないよぉ……」
「ぐっ、……愛らしい、声を出すなっ、術を破りそうになるっ」
「だ、だってぇ……」
 逞しい恋人の体躯に馬乗りになってさめざめと泣いているのはウェンティだ。
 手枷の他に己の動きを封じる仙術を施した鍾離は、己の腹上でへこへこと腰を振っている番の姿に理性が焼き切られそうになっていた。
 タルタリヤと契約を交わしてから今日で三週間。
 遂に恐れていた事態が起こってしまった。
 間もなく始まる鍾離の発情期に先駆けてウェンティが発情してしまったのだ。
 魔神と言えども元は風の元素精霊であったウェンティには、本来発情期というものは存在しない。
 だが、鍾離と番になってからは何故かそれが起こるようになっていた。
 おそらくは一月以上続く龍族の発情期に耐えるための防衛本能だろういう見解だが、詳しいことは分かってはいない。
 一週間前に鍾離が発情期が早まりそうだと言っていたから覚悟はしていたが、後一週間、せめて数日、持って欲しかった。
「モラクス、エッチしたいよぉ」
「うぐ―――」
 甘い蜜の香りが鼻孔を擽り、雄の欲望を刺激する。
 蕩けながらも恋人が『契約』のもと動くことが出来ないことは分かっているのだろう。
 ウェンティは『抱いて』とは言わなかった。
 だが、自分が触れることは許されているからと服を脱ぎ、また恋人の服を脱がし、勃起した雄の欲望を跨いで腰を動かされては堪ったもんじゃない。
 これならばいっそ強請ってくれとさえ思ってしまう。
 俗に言う素股と呼ばれる行為は、挿入に比べれば快楽はそれほど強いものではない。
 しかし三週間にもおよぶ禁欲の末では、直ぐにでも射精してしまいそうなほど気持ち良かった。
「っ、バルバトスっ、自分で、準備をしろっ」
「でも、でもそれじゃ、『約束』が、」
「俺は動かんっ! 意地でも動かん!! だから、だからお前からではあれば、大丈夫だっ」
 本当は『エロいことはしちゃだめだよ?』と言われていたが、釘を刺されたのは鍾離だけだ。
 触れることも『エロい』事もウェンティからであれば、問題無い。
 屁理屈かもしれないが、ウェンティが一週間以上もこの苦しみに耐えることを考えれば、『契約』を守っている事実があればどうでも良かった。



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2025-09-26 公開



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