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歩き出す鍾離。ウェンティもそれに従い歩き出す。
お互いに無言のまま階段を昇り北国銀行の前にたどり着いた頃には『期限』まで30分を切っていた。
店内に入ればまだ仕事中の行員達から貰う視線。彼らは自分達の姿を見るや否や耳打ちで連携を取り、一人が銀行の奥へ、一人が此方に近づいてきた。
「ようこそ、鍾離先生。本日はどのようなご用件でしょうか?」
(これは……。まぁ一カ月前にやらかしているから、当然かな……)
笑顔だが滲んでいる警戒。平然と応対している鍾離だが、きっと彼も気付いてはいるだろう。
上辺だけの笑顔と言葉の応酬に、仕方のないことだと小さく息を吐いた。
「此方へどうぞ。応接室へご案内致します」
奥へ向かった行員から掛けられる声。応対してくれた行員に礼を述べると、鍾離と共に支店長が――タルタリヤが待つ応接室へと通された。
「タルタリヤは直ぐに来ます。お掛けになってお待ちください」
「ああ。突然の訪問にも拘らず時間を作ってもらい申し訳ない」
「とんでもございません。鍾離先生がお越しになった際は最優先で丁重に対応するようタルタリヤからは申しつけられておりますので」
恭しく頭を下げ、応接室を後にする行員。
促された通りソファに座ったウェンティは鍾離に寄りかかり、「ものすごく警戒されているね」と苦笑いを浮かべた。
「仕方あるまい。前回は鬼気迫る形相で、前々回は殺気を纏っての訪問だったからな」
「自覚はあるんだ?」
「自覚なくあのような振る舞いをしていたのならば、それは近年稀にみる愚か者だろう?」
「確かに。でも、欲求不満とヤキモチで銀行に殴り込みなんて、鍾離先生も『凡人』らしくなったね」
「お前の『人』への評価が些か偏っていると思うのは俺だけか?」
軽口の応酬とは裏腹に、繋いだ手に籠る熱は甘い。
お互い必死に発情から目を逸らしていることは、口にせずとも分かっていた。
後少し。もう少しで『契約』が終わる。だが、だからこそ体躯が疼き、その『少し』が耐えられなくなってしまう。
鍾離もウェンティも、視線を相手に向けることは無い。触れる箇所から伝わるぬくもりすらも劇薬と化している。
それでも、離れることは叶わない。
「おまたせ、鍾離先生。ウェンティ君も」
「突然押しかけてすまない、公子殿」
「いやいや、二人ならいつでも大歓迎だよ!」
いつもの様子で応接室に顔を見せたタルタリヤは、挨拶もそこそこに対面するようにソファに腰を下ろす。
鍾離と交わすのは形式的なやり取りだ。
「それで、今日はどういう用件かな?」
すぐさま本題に入る青年は、二人が何故訪問してきたのか分からないと言いたげだ。
「後10分程で公子殿と交わした『契約』の期限を迎える。今日の訪問は『契約終了』の合意を得るためだ」
「え? 嘘でしょ?」
訪問理由を告げる鍾離にタルタリヤが返したのは驚きに満ちた表情だった。