あなたは18歳以上ですか?
18歳未満の方の閲覧を固くお断りいたします。
既に限界を感じている自分とは反対に余裕そうに見える恋人。鍾離は八つ当たりだと理解しつつも、何故平気なんだと愚痴りながら椅子に腰かけた。
自分はこんなにも触れたくて気が狂いそうになっているのに何故平然としていられる?
仏頂面をして尋ねれば、呆れたような声で誰のせいだと返って来た。
「ボクが辛そうにしていたら、君は公子君との『約束』を破るでしょ」
「うっ……、それは……」
「だから『平気なフリ』をしているだけ。そもそも君の馬鹿な『約束』のせいだって分かってる?」
平気なんて、とんでもない。自分から安眠できる場所を取り上げておいて、言いがかりにも程がある。
呆れ顔から不機嫌を露わにするウェンティに、鍾離は反論の仕様が無いと項垂れた。
いつもならもう二、三言ぐらい言い返しただろうに、今日は随分あっさり自分の非を認めるものだと鍾離自身、思った。
そして彼が思うということは、ウェンティも勿論それに気付いている事だろう。彼は頬杖をつき「狡い」と苦笑いを見せた。
「理不尽な八つ当たりをされて腹が立ったのに、そんなしおらしいところ見せられたら許しちゃうじゃないか」
「ぐ……、す、まん……。だが、お前の言う通りだろう……? 今回は俺が浅はかだったことが原因だからな……」
「そうだね。確かに公子君には懐かれているけれど、君が心配するようなことは何もなんだから、恋人としてドーンと構えていて欲しかったよ」
そもそも、誰彼構わず恋敵だと騒ぐのはどうかと思うよ?
苦笑を濃くして苦言を呈してくるウェンティは、この先天変地異が起ころうとも自分と彼の間に鍾離が心配するような事情は起こり得ないと言い切った。
それとも心変わりを疑っているのかと睨まれれば、即座に否定する鍾離。
ウェンティはその食い気味な返答に満足したのか、だったら恋人として余裕を持って構えていろと笑う。
愛らしい笑みで何があっても自分の想いは変わらないと言いきられれば、分かったと言わざるを得ない。
鍾離は恋人に力ないながらも笑みを返し、嫉妬心はなるべく抑えるよう努力することを約束した。
「分かってくれてよかったよ。……でも、まだ一日目なんだよねぇ……」
「ああ……、まだこれが30日も続くと思うと気が狂いそうだ……」
「だよね。目の前に君がいるのに、触っちゃダメなんだもん。本当、酷い罰則だよ」
「同感だ。公子殿も随分性質の悪い罰則を思いついたものだ……」
「彼もそれだけ頭に来たってことだよ。まぁ、いきなり友達の恋人が職場に乗り込んできて『もう会うな!』って剣幕を繰り広げたら、そりゃ、ね?」
「お前はどっちの味方なんだ」
「たとえ恋人でも、悪いことは悪いって言うに決まってるでしょ」
責めるなと恨めしそうに睨むも、反省しろと返される。
十分反省していると言葉を返しそうになったが「口では何とでも言えるからね?」と先手を打たれてしまった。
「頼むから、追い打ちをかけてくれるな」
頭を抱え項垂れる鍾離の耳の届くのは、ウェンティの笑い声。恋人を追い詰めておいてそんな楽しそうに笑わないでもらいたいものだ。