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―――― 7日目
「要らん!」
玄関に響く怒声に、平和に慣れていた身は思わずびくりと震え、竦んでしまった。
遡ること数分前。帰宅した恋人を出迎えたウェンティが見たのは、恐ろしい程疲弊している鍾離の姿だった。
これまでどんな激務に終われようとも顔色一つ変えることなくこなしてきた自称凡人。
そんな彼が今にも倒れそうなほど顔色悪く壁に寄りかかっていた。
長い付き合いとはいえ鍾離がこれほど弱っているところなど今まで見たことの無いウェンティは当然、恋人を心配した。
慌てて駆け寄り、大丈夫かとその身体を支えようとしたのだが、思い出した『約束』。
傍に駆け寄ることもできず、ただ声を掛けることしか出来なかった。
目の前には死人のような顔色で歩くことも儘ならない様子の鍾離の姿。
手を伸ばしても届かない距離は、ウェンティを苦しめた。
番の心配を察してか、鍾離は声も切れ切れに『大丈夫だ』と嘘を吐く。
どう見ても異常事態だというのに強がる恋人を前に、ウェンティはもう我慢の限界だと拳を握りしめた。
鍾離が苦しんでいる姿をただ見ていることしか出来なかった彼が、こうなった『原因』を何とかしようと提案したのはその時だった。
一週間前に顔を合わせた時にタルタリヤからは、鍾離の様子によっては『条件』を緩和しても良いと言われていた。
だからウェンティは、自分からであれば触れても良いと『約束』を緩めてもらえるよう頼んでみると伝えたのだ。
だが、鍾離から返って来たのは交渉は不要だという言葉。
このままでは倒れてしまうと説得を試みたものの、鍾離は頑として首を縦に振らなかった。
日が経つにつれ衰弱してゆく恋人を心配するウェンティは、それでも食い下がった。意地を張らずともタルタリヤも分かってくれるはずだ。と。
そしてその結果が、先の怒鳴り声というわけだ。
「! す、すまんっ」
直ぐに己の失態に気付いたことは褒めてあげてもいいだろう。
だがこの一週間、碌に身体を休めることもできず常に緊張して苛立っていた鍾離。
酷いストレスに晒されていることは明らかで、今も人目が無くなれば自立できない程弱っている。
自分でも異変を感じとっているだろうに、何故こうも譲らないのか。
鍾離に限って自尊心がどうとか言うことは考え辛いが、なにぶん状況が特殊なだけに『絶対にない』とは言い切れない。
既にやんちゃというには血気盛ん過ぎた頃の片鱗すら感じるのだから。
「どうして其処まで嫌がるのさ?」
「これが『契約』だからだ」
「君、今の自分の状態をちゃんと分かっているのかい?」
神でなくなったとしても契約を重んじる信念は変わらない。
それは確かに誇るべきものだと思う。
だが、信念を通そうとして健康を害するのは如何なものか。