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鍾離が知る限り、青年は力あり者にのみ興味と好意を持つ性質だ。故に対風神バルバトスとの戦いで勝利した青年がウェンティに興味も好意も持つことはない。本来ならば。しかし青年はこの数週間暇を見つけてはウェンティを訪ねては他愛ない話を楽しみ、時に酒を餌に食事に誘い、どう見ても懐いている風だった。
命を救われたことへの恩義かと最初こそ大目に見ていたが、頻度が明らかに逸脱していた。次第に鍾離は青年を警戒し、時に牽制もした。ウェンティには二人きりで逢うことを避けるよう注意を促し、隙を見せるなとも伝えていた。それらの苦言にウェンティは嫌な顔一つせず分かったと頷いていたから、てっきり伝わっていると思っていたのだが、まるで理解していなかったとは。
「モラクスに遊んで欲しいからのちょっかいでしょ?」
君が遊んであげないからだよ。
思考がクリアになりながらも首に腕を巻き付け甘える仕草を見せるのは、続きを強請っているからだ。正直、ここの所ご無沙汰だったからさっさとその誘いに乗りたいところだ。だが、ちゃんと理解してもらわないと『次』がありそうで困る。
鍾離はウェンティの誘惑に耐えながらも少年を見下ろし、苦笑いでそもそもそのような申し出を受けていないことを伝えた。
「この数週間、公子殿は俺に手合わせを願い出たことなど一度もなかったぞ」
「え? そうなの?」
「そうだ。むしろ俺から身体を動かすことを提案したぐらいだ。まぁ、断られたがな」
「嘘。モラクスから言ったの? なんで??」
「俺も最初はお前へのちょっかいはそういう意味だと思っていたからだ」
理由なく人と戦うことはしたくない。それがたとえ『手合わせ』という名の指南だとしても、元の力が違い過ぎる為できれば避けたいのが本音だ。だが、そんな思いを押し退けて申し出た『指南』。鍾離は青年は嬉々としてそれを受け入れると思っていた。その時までは。
しかし返って来たのは『次のお楽しみにしてく』なる言葉で肩透かしを食らった。『手合わせ』が望みでないのなら、何故頻繁にウェンティを訪ねるのかと聞けば、何やら歯切れの悪い言葉が返って来た。それらを要約すると、『受けた恩を返したい』ということらしいが、何故そんな言い辛そうにしているのか。
何日か観察して疑問が疑惑に変わり、確信になった時、青年とウェンティが二人で逢うことが無いよう極力その場に居合わせるようにしていたのだが、正直実に情けない気分だった。己の行動が嫉妬からくるものだと理解していたから。
「そういうことは早く言ってよ!」
「言っただろうが。それなのに聞く耳を持たなかったのはお前だ、バルバトス」
「公子君がボクに好意を持ってるなんて話、一回も聞いてないよ。『注意しろ』とか『隙を見せるな』とかそういうことしか言ってなかったじゃないか」
「それぐらい察しろ」
「無茶いわないでよ。そんな考え欠片もなかったんだから」
先入観とは恐ろしいものだ。ウェンティはずっと『公子君が興味を持っているのはモラクスだけ』と信じて疑わなかったのだから。
反論の声を上げるウェンティを不機嫌な面持ちで見下ろす鍾離。するとその眼差しを受け取っていたウェンティは盛大にため息を吐くと、漸く理解できたと今度は笑った。
「モラクス、公子君に嫉妬してたんだ?」
「だったらなんだ」
「食事の約束をすっぽかすぐらい機嫌が悪いからボクが何か拙い事しちゃったのかと思ったよ」
正直不安だったと苦笑するウェンティ。鍾離はバツの悪そうな顔を見せ、少し言い淀んだものの「すまない」と己の非を詫びた。
「いいよ。恋人の可愛い嫉妬には寛容でなくちゃね?」
くすくすと笑うウェンティは鍾離の首に伸ばしていた腕を引き寄せ、チュッとその形の良い唇を奪ってみせた。
口づけた後名残惜しいとばかりに薄い唇を舐めてやれば、今度は鍾離から口づけが齎される。
「……ねぇ、おあずけが長すぎてそろそろ我慢できないんだけど」
「安心しろ。俺もだ」
戯れとばかりに何度か口づけを交わした後、寝屋まで連れ込んでまさかこれで終わりじゃないよね? と言わんばかりに挑発すれば、鍾離は煽情的な笑みを浮かべた。