TREMOLO [ANNEX]

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初めてを君に捧ぐ

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「ありがとう、モラク―――じゃない、鍾離」
「お前にそこまで言われて拒否し続けられるわけがないだろうが。……お前が言い出した事だ、もしあの餓鬼を愛し気に呼ぼうものなら―――」
「だからあり得ないってば!」
 ヤキモチ妬きなんだから!
 そう笑えば、龍族の執着がまだ分かっていないのかと苦笑いが返ってきた。
 ちゃんとわかっていると頷き笑顔を見せれば、身を屈めた恋人に唇を奪われる。
「っ、ちょっと! もう……、本当、君の独占欲には驚かされるよ!」
 子供の前だと言いながら、その子供の前で恋人の怒りを収めるためとはいえ熱烈な口づけを贈った自分が言えることではないかと己に突っ込むウェンティだった。
「……えっと、モラクス、って呼んでいいかな?」
「き、気安く呼ぶなっ!」
「ごめんね、でもこの世界で君のことを『岩の魔神』とは呼べないんだ。嫌かもしれないけれど、我慢してもらえないかな?」
 威嚇しながらも怯えを見せる幼子にウェンティは視線を合わせるように身を屈める。
 それに幼子は――モラクスはビクッと肩を震わせ、狼狽えて見せた。
(か、かわいい……)
 眼光は鋭く、自分が出会った時の鍾離の面影は僅かだがある。
 だが、能力的にもサイズ的にも当時の鍾離とは似て非なるもので、どうしても可愛いと形容してしまう。
 自分が見ることができなかった恋人の過去に、どうしたって顔は緩む。
 鍾離に背を向けていてよかったと思う反面、見えてなくとも彼にはバレているだろうとも思う。
「おい」
 ほら、やっぱり。
 怒気を含んだ声にウェンティはコホンと咳払いをすると、モラクスに手を差し出した。
「ボクはウェンティ。よろしくね、モラクス」
「…………貴様は、何者だ」
 人ではない。だが、魔神でもない。魔神の気配はするものの、感じるそれは2つある。
 警戒を露わにして手を握り返してくれないモラクスに、ウェンティは苦笑いを浮かべて己の正体を隠すことなく告げた。
「ボクは元々は風の元素精霊で、色々あって二人の魔神の力で彼らと同じ魔神となった存在だよ」
「風神バルバトス。それが俺の番だ」
「ふう、じん……」
 後ろからの補足という名の威嚇に驚きの表情を見せるモラクス。
 ウェンティはちょっと強引だと自覚しながらも差し出した手とは反対の手を彼に伸ばし、強引に握手を結んだのだった。
「君が元の世界に戻るまでの間だけだけど、よろしくね」



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2024-06-13 公開



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