TREMOLO [ANNEX]

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初めてを君に捧ぐ

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「……おい」
 鍾離からの予想外の愛の告白にウェンティが悶えていれば、耳に届くのは訝しむような幼子の声。
 動きを止め声のした方向に目をやれば、呆れたと言わんばかりの顔で此方を見ているモラクスの姿があった。
「手! 手、洗ってきた!?」
「洗ってきた。……お前たちは本当に番だったんだな」
 強引に鍾離の腕から抜け出すウェンティは幼子に駆け寄る。
 すると恋人の対応に機嫌を損ねる大人気ない魔神の姿に幼子はため息を吐き、改めて『未来の自分』の姿に辟易して見せた。
「コレのナカにある力を感じることもできない程お前は未熟だったのか?」
「え? ボクのナカにある力って何?」
「そんなわけないだろうが。ただ、お前がいつも番の傍にいないから契約上の番なのかと思っていただけだ」
「え? ちょっと、本当に何!? 何の話してるの??」
 説明を求めるように鍾離とモラクスを交互に見るウェンティだが、二人はそんな彼を無視して会話を続けている。
 番のあるべき姿を解く幼子に、書物の知識をひけらかすなと一蹴する鍾離。
 ウェンティはそんな二人のいがみ合いに「ボクの話を聞いてよ!!」と大声でストップをかけた。
 その声にぴたりと止まる二人の言い合い。小さくため息を吐いた鍾離はウェンティの肩を抱き寄せ、昼食を食べながら質問に答えると恋人を促した。
 幼子へ向ける視線は相変わらず冷ややかなモノだったが、返される視線は敵意がむき出しでお互い様だと思わされる。
「君達って仲が良いのか悪いのか分からないよね、本当」
「「良いわけあるか」」
「ほら、息もピッタリじゃない」
 ウェンティの苦笑に鍾離とモラクスは顔を見合わせ、顰め面になる。だが、
「喧嘩しちゃだめだよ」
 そんなウェンティからの忠告に、二人は言葉を呑み込み椅子に腰かけるのだった。
 準備しておいた食事をテーブルに並べるウェンティは、神妙な顔で黙り込む二人の姿に苦笑を濃くした。
(『モラクス』がボクのことを好きなるから遠ざけたいなんて、本当、ボクのモラクスは可愛いんだから)
 幼子を憐れに思うのは、勝手に想いを決めつけられて威嚇されているからだ。
 しかしそれを嗜めることができないのは、鍾離が自分を心から愛していると改めて知ってしまったから。
 ウェンティは元の世界に戻れるか分からず不安でいっぱいだろう幼子に寄り添ってやりたいと思う一方、大切な恋人に心配や不安を与えたくないなとも思う。
 二人にとって一番いい関係に納まるにはどうすればいいのだろうかと調和を望むウェンティは、料理が並んだ食卓を二人と一緒に囲みながら自分がとるべき行動を考えた。
(モラクスがもっとこの子に優しくしてあげたら『モラクス』だって警戒を解くと思うんだよなぁ)
 事実、ウェンティに対しては生意気ではあるものの時折警戒を解いてくれることもあるのだから。
 だが先程鍾離が言っていた言葉を思い返すと、ウェンティへの愛ゆえにモラクスに優しくするのは難しいかもしれないからどうしたものかと考えは堂々巡りになってしまう。



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2024-07-12 公開



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