TREMOLO [ANNEX]

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初めてを君に捧ぐ

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 鍋で煮込んでいるスープをかき混ぜるウェンティはプルプルと震える己の足腰に叫び出したい衝動を必死に耐えていた。
(確かに久しぶりだったけど、流石に、流石にっ)
 ちらりと視線をリビングへと向ければ、沸々とこみ上げてくる羞恥。
 ウェンティは居た堪れなくなって直ぐに視線を逸らしたが、鮮明に思い出される昨晩の甘いひと時にその顔は真っ赤だった。
 二週間ぶりの甘いひと時に、昨晩は大いに盛り上がってしまった。
 それこそ、其処がリビングであることなど途中から欠片も思い出すことなく夢中で鍾離と愛し合ってしまった。
 抱き合うように何度も求め合い、ベッドでは叶わない体勢でも執拗に愛された。
 最後の方では獣のように背後から追い立てられ、過ぎる快楽にウェンティは意識を失った。
(でも、それじゃ終わらなくて……)
 気が付けばリビングからバスルームに居て、其処でもまた求め求められた。
 もう無理だとギブアップを告げた時には確かベッドに居たはずだ。
(相変わらず元気過ぎるんだよ! じいさんの癖に!)
 好奇心旺盛な若者たちから根掘り葉掘り『夜』のことを尋ねられる度に長い年月を生きているが故その手の欲望は枯れ果てていると苦笑交じりに交わしているくせに、何処がだ。
 これで『枯れた』のならば『全盛期』はどうだったのかいつか聞いてみたいものだ。
(……っ、ボクのバカ)
 百面相をしていたウェンティの表情が曇る。
 心の中で零した悪態は、勢いとはいえ鍾離の過去を想像してしまった己に対するものだった。
(ボクと出会ってからはモラクスにはボクだけ。だから、こんな風に嫌な気持ちになる必要なんてない。そうだ。ないんだ。……ないんだ…………)
 静かな朝のリビングに鍋の煮える音が小さく響く。
 手を止めそれを眺めるウェンティは何故もっと早く出会えなかったのかとどうにもならない過去を悔やんだ。
「おい」
「!」
 突然掛けられた声に大袈裟に身体が震えた。
 声のした方を見れば、幼子が――モラクスが訝し気な様子でウェンティを見ていた。
 こんなに近くにいるのに気配など全く感じなかった。
 やはりモラクスは小さくとも『岩の魔神』なのだと鍾離を思い出して何故か胸が痛んだ。
「火元で呆けているな。怪我をするぞ」
「ご、ごめんごめん。……おはよう、モラクス」
 ぶっきらぼうだが心配してくれていることは伝わった。
 優しい幼子にウェンティは気を付けると笑みを浮かべ、弱くなっていた心を正すように『今』に意識を集中する。



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2025-03-14 公開



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