あなたは18歳以上ですか?
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(そうだ。変えられない過去を嘆いても時間の無駄だってちゃんと分かってる)
それでも心が弱くなってしまったのは、きっと寝不足のせいだ。
『人』は睡眠不足になると正常な思考がままならなくなると聞いている。
だから今夜は早く寝ようと一人決意したウェンティの表情は先程までの悲壮感はもう無かった。
気持ちが少し軽くなったからか、ウェンティはその時漸く自分に向いている視線に気が付いた。
視線はモラクスのもので、彼は怒っているのか困っているのか分からない顔をしている。
「どうしたの?」
「な、なんでもない……」
「? そう? それならいいけど」
何やら言い辛そうなその様子を訝しく思いながらも、それを指摘するのは幼子とはいえ魔神の矜持を傷付けてしまう気がしたから敢えて気付かない振りをした。
朝食はもうすぐできるから先に顔を洗っておいでと笑顔で促せば、モラクスは分かったと頷きを返す。そして……。
「っ、はよぅ……ウェンティ……」
「え?」
「顔を! 洗ってくる!!」
零された挨拶はポツリと呟いたと言うに相応しいものだった。
だから聞き間違いかとウェンティが目を丸くすれば、モラクスは追及を逃れるようにリビングから出て行ってしまった。それはそれは真っ赤な顔して。
残されたウェンティはポカンと幼子の姿が消えたドアを見つめてしまう。
(え? 何? もしかしてボク今挨拶された? あの子に?)
パチパチと瞳を瞬かせ、思い返す先刻のやり取り。
先程見た様々な表情はどうやら幼子の照れ隠しだったようだ。
「えぇ……。何それ。可愛すぎない?」
これまでウェンティが挨拶をしてもモラクスは無視するか『ああ』としか返してこなかった。
それが、どうだろう。先程は挨拶を返され、名前まで呼んでくれた。それも強要されて嫌々ではなく、自発的に。
(そういえば昔エウルアが警戒心の強い猫が懐いてくれた時の喜びを語っていたけど、こんな気分なのかな?)
なるほど。確かにこれは嬉しい。
ウェンティは翡翠を細め微笑み、漸く幼子が心を開いてくれたと喜びを噛みしめた。
「その笑みは勿論俺のことを考えているからだろうな?」
「うわ! モラクス!? いつの間に!?」
「声を掛けるまで気付かないほど何を考えていた?」
腰に巻きついてくる腕は幼子のモノとは比べ物にならないほど逞しい。
ウェンティの体躯をすっぽりと覆い隠すのは幼子ではなく彼の愛おしい恋人だ。