TREMOLO [ANNEX]

ゆらゆらぎが運営する同人系個人サイト

あなたは18歳以上ですか?

18歳未満の方の閲覧を固くお断りいたします。

  • Yes
  • No

初めてを君に捧ぐ

33



「……ごめん。君とエッチしたことを後悔しているわけじゃないから、誤解しないでくれるかい……?」
「今更そんな思い違いはしないから安心しろ」
「よかった。……モラクス、大好き」
「ああ。俺もだ。愛している、バルバトス」
 唇を啄むように愛しみ、募る一方の想いを告げ合う二人。
 何度かそれを繰り返していれば、また良い雰囲気になりそうになってしまうのは仕方のないことだ。
 だが既に夜も更けて久しいから『もう一度』は我慢しなくては。
 なけなしの理性で欲を退けるように口づけを止めたのは、二人ほぼ同時だったから笑ってしまうというものだ
「そろそろ眠ろう?」
「そうだな。……ああ、そう言えば」
「何?」
「明日ブエルが訪ねてくることは伝えていたか?」
「え。聞いてない」
「そうか。すまん。一週間ほど前に親書が届き、起こっている事象を直に確認したいとのことだ」
 特に気に留めるわけでも無く明日友人の訪問を伝えてくる鍾離にウェンティが見せるのは戸惑いと焦りだ。
 しかしそれは当然だろう。事態の収束のために遠路はるばる出向いてくれた友人をもてなす準備など全く出来ていないのだから。
 呑気に眠っている場合ではないとベッドから降りようと身を捩るウェンティ。
 だが、それは鍾離が止めるよりも先に腰の鈍痛によって妨げられてしまった。
「いたたたた……」
「いきなりどうした。身体を休め回復に専念しなければ翌朝立つことも儘ならないのだろう?」
「覚えていてくれてありがとうっ。でも、それどころじゃないでしょ!」
「何を怒っている?」
「怒っているんじゃなくて、焦っているの! ブエルを出迎える準備をしなくちゃダメでしょ!」
 もう一日も無い状態で何処まで出来るか分からないが、それでも出来る限りのおもてなしをしたいと訴える。
 鍾離はそんなウェンティに驚き目を丸くした。神で在った頃はそんな気遣いなどしたことが無かったはずなのに成長したものだ。と。
「ちょっと。今ボクのこと馬鹿にしたでしょ!?」
「誤解だ。他者を気遣えるようになったのかと感心してただけだ」
「それを馬鹿にしてるっていうんだよ!!」
 友人の訪問を出迎えることぐらい昔からしていたと反論するが、歓迎を受けたことの無い鍾離はその言葉を信じてくれない。
 しかし、鍾離が『歓迎』を受けた記憶が無いというのは当たり前のことだった。
「あのね、訪ねてきたことの無い相手をどうやって歓迎しろっていうのさ」
「おかしなことを言うな。モンドを訪れたことは何度もあるだろうが」
「そうだね。モンドには来てくれたよね。でも君、ボクを訪ねてきたことなんて一度も無いって知ってる!? いつも気付いたボクが君のもとに押しかけていたでしょ!」
 口に出した過去に、ウェンティは思いの外傷付いた。
 鍾離の愛を疑ってはいないが、それでもいつも追いかけているのは自分の方ばかりだと思い知らされたから。



 | 


2025-04-03 公開



Page Top