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テーブルに並べられたお茶とお菓子。
それらを囲う四人の表情は様々だったが、尤も悠然としていた少女が湯呑みを置いたところで話は再開した。
「私の―――世界樹の記憶によれば、彼は貴方の過去で間違いないそうよ」
「同一の存在であることは否定の仕様がない。だが、俺にはそのような記憶はない。それはどう説明する?」
「あら。説明が必要かしら? 貴方が言っていることは、『鶏が先か、卵が先か』。それに等しいのではなくて?」
鍾離と幼子は同一の存在であり、幼子は鍾離の過去であるらしい。
だが、鍾離には幼い頃に未来を垣間見た記憶は存在しない。
それを指摘すれば、全ての時間軸が必ずしも同じ未来を辿るとは限らないとナヒーダは笑った。
「だって今この瞬間にも世界は分岐しているのだから」
「生物の決断の数だけ世界は存在、と?」
「ええ。『同じ世界であると思っていたモノが異なる世界だった』。もしくは、『異なる世界だと思っていたモノが実は同じ世界だった』。それが私達の生きる世界なのだから」
「……つまり、俺とコレが『異なる世界』の岩の魔神である可能性もあれば、『同じ世界』である可能性もあるということか」
「そういうことね」
「え? でもそれじゃ、モラクスが鍾離の過去とは限らないんじゃ……」
「あら。気付いてしまったのね」
考え込むあまり首というか身体ごと傾いているウェンティ。
その姿にクスクスと笑うナヒーダを鍾離は睨みつけた。
――― 説明する気が無いと言うならば力尽くで喋らせるぞ。
そんな圧をぶつけられた少女は苦笑いを浮かべ、肩を竦ませた。
「私が知ることが出来る世界は、『私』が存在する世界だけ。『他の私』の世界については分からないけれども、『私』の世界の過去から彼が――『岩の魔神』が呼ばれたことは間違いないわ」
「コレが呼ばれたことで世界が分岐したということか」
自分には無い過去が作られたということはそう言うことなのだろう。
眉間に皺を刻みながらも考え込む鍾離に、ナヒーダは笑みを返すだけだった。
「理屈は分かった。だが、ウェンティが『呼んだ』とはどういう意味だ?」
「彼が意識して呼び寄せたわけではないわ」
「それは分かっている」
「けれど、変えることのできない過去を『変えたい』と願ったのではないかしら?」
視線を鍾離からウェンティへと移すナヒーダだ。
愛らしいペリドットの瞳に真っ直ぐと見つめられたウェンティは、そんなわけがないと狼狽えた。
過去は変えることが出来ない。
それが分からないほど愚かではないし、そもそもただの魔神に理を覆す力など有るわけがない。
どれ程願ったところで叶うモノでもないはずだ。