TREMOLO [ANNEX]

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初めてを君に捧ぐ

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 ウェンティは気付いたのだろう。幼子が今ここにいる原因が―――自分が無意識に望んでしまった『願い』が何、を。
 ぐっと押し黙る友達の姿に彼の恋人も彼が呼んでしまった幼子も心配そうな表情を見せる。
 ナヒーダは黙ってお茶を楽しみながらもその様子を観察した。
 ウェンティは自分のことでいっぱいいっぱいになっているのか、考え込んでいる。
 鍾離はそれを心配しながらも何も言わず湯呑を手に取りナヒーダと同じく茶を啜った。きっと彼は恋人が話すまで待つと決めているのだろう。
 そして、巻き込まれた当人である幼子――モラクスは眉を下げウェンティを気にしている。
 何か言おうとして口を開いては、かける言葉が分からず口を噤む。何度もそれを繰り返し、結局何も言えなかった幼子は己の無力を恥じるように俯いた。
(あらあら。確かにこれは彼も心配ね)
 幼子がウェンティに向けているのは『恋』と呼ぶにはまだまだ青い。だが、実を結び熟すまではそう時間はかからないだろう。
 鍾離の懸念を目の当たりにしたナヒーダは、恋人に心配をかけたことを詫びている友達を盗み見た。
「番の心配をするのは当然だ。気にするな」
「ん。ありがとう、もら―――鍾離」
 愛しげに髪を撫でる鍾離と、その手に愛らしい笑みを見せるウェンティ。
 二人が互いを想い合っていることはこれだけでも十二分に伝わる。
 幼子はそれを見たくないのか、俯いたままだ。
(ウェンティったら罪作りね)
 幼子の年齢を考えれば色恋などまだしたことがないだろうに、彼の『初恋』を奪ってしまったのだから罪な男だ。
(知れば彼の世界の『自分』に申し訳ないと慌てるかしら?)
 ナヒーダがそんなことを考えるのは、彼女が世界樹と通じているからだ。
 放っておけば三角関係になりそうな三人を眺めるナヒーダ。
 その視線に気付いたウェンティは、鍾離に見せていた笑顔から一転して苦笑いを向けてきた。
「教えてくれてありがとう、ナヒーダ」
「いいのよ。困っているお友達を放ってはおけないもの」
 ナヒーダはにっこりと笑みを返す。
 落ち着いただろうウェンティは今一度感謝を伝えると、『原因』が気になっているだろう鍾離とモラクスに全てを話すと告げた。
 意を決したその表情に鍾離もモラクスも黙って頷き、『呼ばれた』真相の解明を静かに待った。
 二人からの視線を受け取るウェンティは少し怯んでしまう。
 しかしそれは無理もないことだろう。モラクスがこの世界に呼ばれた原因が己の嫉妬だと伝えなければならないのだから。



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2025-07-07 公開



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