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ウェンティは、理不尽な事象に巻き込まれた幼子が納得できる説明をしようと思っているのだろう。
しかし、聞けば聞くほどどれほど彼が鍾離を愛しているかを熱弁しているようにしか思えない。
未来の自分よりも未来の自分の番に懐いている幼子にとって、それは何度も聴きたくない話だった。
眉間の皺を深くし不機嫌になるモラクス。
静観してるナヒーダは、鍾離のことしか見えていないウェンティに気付いてあげてと心の中で語り掛ける。勿論、口に出してはいないから彼女の訴えが彼に伝わることはなかったが。
一方、伴侶からの熱烈な告白を受けた男の表情は上機嫌そのものだった。
頬を緩ませ、受け取った想いに自分も同じだと言わんばかりに深く頷いている。
それは昔から変わらない二人の姿だった。
きっとこのままウェンティは己の心の内を全て曝して、幼子は恋になる前に失恋を経験して、鍾離は番の不安を解消するべく恋人と共に寝室に籠るのだろう。
ナヒーダが旅の予定を長めに取っておいてよかったと思うのは、友達二人の仲睦まじさを嫌という程知っているから。
部外者とはいえ、ナヒーダはかつて七神の一柱としてこの世界を支えた知恵の神。過去からやって来た幼子をそのまま放っておくわけにもいかないというものだ。
子育ては経験が無いが、知識はある。だからまぁ何とかなるだろう。相手は幼子とはいえ、後の岩神モラクス。聡明であることは間違いないのだから。
鍾離とウェンティが思う存分愛を確かめ合っている間、幼子の世界の話を――自分が知らない過去の話を聞いてみるのも一興だ。
そんなことを考えていたナヒーダだが、知恵の神の予想に反して事態は思わぬ方向へと向かって行った。
(どうしたのかしら?)
おなか一杯の惚気を語っていたウェンティが、不意に黙り込む。
耳を傾けていただけの少女は不思議そうに彼へと視線を移した。
何やら困り顔をしている友達は己の恋人へと視線を向け、何かを伝えようとしている。
だが、唇は動いているが音は何も出ていない。
声が出ないのか。それとも言葉が見つからないのか。
「どうかしたのか?」
ウェンティの異変に鍾離が見せるのは心配そうな表情。
たったそれだけでも彼が番をどれほど愛しているか分かってしまうから、本当におなか一杯だ。
「……ご、めん。鍾離には、聞いて欲しくない……」
泣きそうな顔を見せた後、俯くウェンティ。
怯えたような声には流石の鍾離も驚いた様子だった。
「……何故だ?」
押し殺したような声。
先程までの上機嫌が嘘のように険しい顔をしている男が感じているのは憤りだ。