あなたは18歳以上ですか?
18歳未満の方の閲覧を固くお断りいたします。
遠くから聞こえるドアが閉まる音。
鍾離とナヒーダが家を出て行ったことを遠ざかる気配が教えてくれた。
リビングに残されたウェンティは、気まずそうに幼子へと視線を向けた。
「ご、ごめんね」
「いや……、構わない……」
気丈に振舞おうと空笑いを浮かべるも、逆に気を遣わせてしまったようだ。
数千年という永い時間を生きているはずなのに、なんと情けないことか。
己の不甲斐無さに打ちひしがれるように溜め息を吐いて顔を覆うウェンティ。
そんな自分を急かすことなくただ黙って待ってくれている幼子に、恋人の面影を垣間見た。
自分が未来に呼ばれた理由を早く知りたいだろうに気遣ってくれている。鍾離の本質である『優しさ』はこの頃から何も変わっていないようだ。
「……」
「……」
「茶を」
「え?」
「っ―――、茶を、注いでやるっ」
ものすごい勢いでカップに手を伸ばす幼子。
あまり乱暴に扱うと割れちゃうよ。
と、ウェンティが止める間もなくターコイズブルーの装飾が施されたモンド産のティーカップは持ち手がボロリと取れ、破壊されてしまった。
モラクスの顔面は途端、真っ青になる。それが以前ウェンティがかつて治めていた国で民から献上されたものだと聞いていたからだ。
「あ……、あっ、す、すまないっ」
視線を下げれば、己の手にはカップの取っ手だけが収まっている。
しどろもどろになりながらも謝ってくるその姿は、小さな子供が悪戯をして見つかった時のそれによく似ていた。
突然のことに驚いていたウェンティは、その姿についつい吹き出してしまう。
カップが割れてしまったことは残念だが、形あるものはいつかは壊れてしまう。それが世の理。
そして、モラクスは自分を元気づけるために慣れないことをしようとしてくれた。
怒る理由も悲しむ理由も何処にもなかった。
「あはははは。そんな顔しなくても大丈夫だよ!」
「わ、笑うなっ!!」
「だって、君、びっくりするほど真っ青な顔をしているんだもん」
「っ! お前がらしくない様を見せるからだろうがっ!!」
「ごめんごめん。心配してくれてありがとう、モラクス」
笑い過ぎて目尻には涙が滲んでしまう。
幼子は言い返す言葉もないのか鼻息荒く椅子に座り直して両腕を組んで『怒っている』アピールをしてきて、それがまた可愛かった。