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自分の身勝手な想いが未来に呼んでしまったのだから、どんなことをしてでも帰る方法を探すから安心して欲しい。
そんなことを泣き笑いのような顔をして言わないで欲しいとモラクスは思った。
ウェンティが欲しているのは他でもなく『鍾離』の過去だと知ってしまったからだ。
(俺は、その『過去』であるはずなのに……)
「……つまり、あいつの『初めての相手』にお前はなりたくて俺を呼んだということか?」
「そう、だね……。本当、ごめん。ボクも自分がこんなに嫉妬深いとは思っていなくて……」
自分を恥じているようにも見える姿からは、鍾離に向けているような欲望を全く感じない。
同一の存在であるはずなのに、ウェンティには全く別の存在に映っているかのようだ。
モラクスが先程まで感じていた『期待』は粉々に打ち砕かれる。そして―――。
息が止まるほどの痛みを自覚した次の瞬間、自分でも思いがけない行動に出ていた。
「!? うわっ!」
響いたのは椅子が倒れる音と驚きの混じった悲鳴と、陶器の割れる音。
美しい翡翠色の瞳を大きく見開き自分を見つめるウェンティを、モラクスは押し倒していた。
大した抵抗も見せず床に押し付けられたウェンティは呆然としている。だが直ぐに我に返り、「危ないじゃないか!」なんて怒ってくる。
押し倒されたにも拘らず危機感が無さ過ぎると思うのは当然だ。
いや、むしろ危機感が無くて当然なのかもしれない。
生まれて数十年とはいえ、まだ成長が始まっていない身体はウェンティとほぼ変わらない。
それは傍目から見ても幼子がじゃれついてきているようにしか見えないだろうし、ウェンティもそう思っているに違いない。
鍾離のような成体を有していれば少しは『男』として意識されただろうが、此処でも『違い』を見せつけられて悔しかった。
「……俺では、力になれないか?」
「モラクス……?」
眼中にないことは分かった。でも、それでも自分が未来に呼ばれた理由が『鍾離の初めての相手になりたい』というものであるのなら、それなら―――。
「励ましてくれるのかい?」
「! ちがっ―――」
縋りついた自分を見て何故そんな勘違いが出来る!?
憤りを覚えながらも否定しようとしたモラクスの言葉は途中で止まる。
自分を見つめるウェンティの翡翠が悲しげなものになっていたから。
「ウェンティ……?」
何故そんな顔をして笑う?
戸惑い狼狽えていれば、圧し掛かる体躯を拒むように柔く圧された。
大した力ではなかったが、呆然と身を引くモラクス。
ウェンティはゆっくりと起き上がると、もう一度「ごめんね」と悲しげに笑った。