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(俺の『ウェンティ』にはあんな顔をさせない。絶対に)
鍾離のことが大好きで堪らない故の嫉妬。そしてその嫉妬で理を曲げてしまったと恥じて悲しむことなど自分の番には絶対にさせてはならない。
モラクスは自分を抱きしめたままのウェンティの背に手を回し、ポンポンと彼が自分にしたように背を優しく叩いた。
「ウェンティ、ありがとう。おかげで俺は、『俺の』ウェンティを悲しませるクズにならずに済みそうだ」
「どういたしまして。でも、鍾離はクズなんかじゃないからね? 最高に最高な恋人なんだから、間違えないでよ?」
「クズじゃないなら、愚図だな。いや、間抜けでもいいかもしれないな」
己の番の不安に気付かないのだから、間違ってはいないだろう。
うんうんと自分の判断に納得するモラクス。ウェンティは酷いと言いながらも笑った。
ひとしきり笑い終えた後、ウェンティは「でも」と眉を下げ、微笑んだ。
申し訳なさそうなその表情に、モラクスはどうかしたのかと心配になった。
「もし君が許してくれるのなら、元の世界に戻った後、此処での記憶を消して欲しい」
「! 何故だ……?」
「バタフライエフェクトって知ってる?」
「ばたふら……?」
「バタフライエフェクト。最初は蝶の羽ばたきのように微々たる変化だったものが後々大嵐を呼ぶような大きな変化を齎す可能性のことだよ」
「……それがどうかしたのか」
尋ねながらも分かっていた。ウェンティが何を言いたいのか。
「未来を知ってしまった君の行動が世界にどんな変化を齎すのか、分からないでしょ?」
世界の変化が全ての者達にとってより良いものならば、それは受け入れてもいいかもしれない。
でも『全ての者達』にとってより良いモノなど存在しない。だから、過去を書き換えるべきではないとウェンティは言っているのだ。
「ウェンティの言っていることは、分かる。正しいということも……」
「……君を惑わせてしまってごめんね。でも、ボクを見て? 不幸に見える?」
「それは……、見え、ない……」
「でしょ? むしろ幸せそうに見えない??」
「見える……」
「だよね? こうやって君のことを過去から呼び出しちゃったけど、でもそれってつまりそれぐらい『モラクスのことが大好き』ってことで、毎日モラクスと仲良く過ごしているからこそ、だよ」
だから『未来のボク』に同じ想いをさせてしまうのはちょっぴり可哀想だけど、でもそれはモラクスへの愛があるからこそ。
だから大丈夫だと笑うウェンティに、モラクスは馬鹿だなと笑った。
(嗚呼……、俺はお前が羨ましいぞ、『モラクス』)
自分は後三〇〇〇年以上待たなければウェンティに出会えない。
こんな綺麗な存在を知ってしまった後に待つ三〇〇〇年は、きっと気が遠くなる程長い時間になるだろうに。
(一日一日を数え待ち続けるよりも、いっそ忘れてしまった方が確かに気が狂わずには済みそうだ)
まだ出会うことのない『番』に悲しい思いをさせたくないが、目の前の『未来』が大丈夫だと笑っているのだ。
モラクスは「分かった」と頷き、元の世界に戻れれば『未来』で見聞きしたこと全てを記憶から忘却すると約束した。