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「ありがとう、モラクス」
「別に礼を言われるようなことじゃない。……未来が変わってウェンティに―――いや、『バルバトス』に出会えなくなるのは絶対に避けたいからな」
まだ見ぬ自分の番に想いを馳せているのだろう。穏やかに微笑むその姿は、幼いながらも鍾離そのものだった。
「……やっぱりボクは『初めて』じゃなくてもいいや」
「何故だ?」
「今の君を見て思ったんだ。ボクは鍾離の――モラクスの『最後』になりたいなって」
ウェンティは恥ずかしそうに笑う。
勿論『初めて』が全く要らないと言うわけではない。だがそれでも、『初めて』にこだわるのではなく、『最後』の相手になれるよう在りたい。と。
「確かに、そうだな」
「でしょ?」
「だが俺は、叶うのならば『バルバトス』だけの俺で在りたい」
「ふふ。きっと君の世界のボクもその気持ちだけで十分だと思うと思うよ?」
もしも鍾離にこの過去があったのならば、同じように思ってくれたに違いない。
その気持ちだけでもう十分幸せだと己の恋人に想いを馳せるウェンティの微笑みは、やはり息を呑む程美しかった。
「……もしかすると、あいつにも同じ過去があるかもしれないな」
「え? でもそんな記憶がないって―――あ」
「気付いたか」
「う、うん……」
モラクスは元の世界に戻ったら『未来』の記憶を全て消すと約束してくれた。
それはつまり、『未来』の世界に呼ばれたと言う記憶事態が無くなるということだ。
鍾離は、モラクスを見た時に『こんな記憶は自分には無い』と言った。
ナヒーダは、モラクスがこの世界の過去から来たと言った。
卵が先か。鶏が先か。
そんな話ではなく、鍾離はそれらの記憶を失っただけなのかもしれない。他ならぬ、未来の自分の『番』との約束を守るために。
「……そっか。そっかぁ……、もしかすると、鍾離も未来に呼ばれていたのかもしれないね」
「ああ。……ウェンティ」
「なんだい?」
「俺は、お前のことを好きになりかけていた」
「! も、らくす……?」
「でも安心しろ。お前が馬鹿みたいにあいつのことしか見ていないと分かって、そうなる前に引き返せた」
「事実だとしても酷いね!? まるで『好きにならなくて良かった』って聞こえるよ!?」
「その通りだ」
「ますます酷い!」
「何故だ? 俺は、俺の『バルバトス』だけを愛したい。あいつがお前を愛でているように、俺だけの番を大切にしたい」
記憶を消すため、己の唯一に出会うまでに間違いが起こらないとは断言できない。
だがそれでも『番』になりたいと思う相手はたった一人だけだと知っておいて欲しい。ウェンティにも、この先出会う『ウェンティ』にも。