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「そうだ。俺も『未来』を見たことがある」
ウェンティが気付いたことを察した鍾離が見せるのは苦笑い。
「アレが呼ばれた時は俺の過去ではないと言ったが、……理由は言わずとも分かるだろう?」
「君も、ボクと約束したの……?」
「お前ではなく、『未来』のお前だ」
「なんで……、どうして記憶、消すって、消したって……」
「自身への願掛けだ」
困惑するウェンティ。
鍾離は泣きそうな顔をしている彼を抱きしめた。
「この世界に戻ってから直ぐ俺は記憶を封じた」
「でも―――」
「『消した』のではなく『封じた』だ」
苦笑を濃くする鍾離は揺らめく翡翠を見つめ顔を歪めた。
苦しいからではなく、悲しいからでもない。ただ愛おしくて堪らない。
そんな表情でウェンティを見つめたのだ。
「約束を違えてしまってすまない。時が追いついた後ならば未来が変わることも無いだろうと思った餓鬼の悪足掻きだ」
どうしても忘れたくなかったと言った鍾離。
ウェンティは『モラクス』との約束を思い出し、顔を歪めた。
「あの子は――過去の君は、ボクの事は『憧れ』で『好き』じゃないって言ってたっ」
でも本当は、違ったの? 『モラクス』も君も、本当は『未来』のボクのことを――――。
愛されていることは分かっているはずなのに、何故こんなにも悲しいのか。
でもそれは当然かもしれない。誰よりも愛している彼の『一番』は自分ではないかもしれないのだから。
「俺が愛してるのはお前だ、バルバトス。過去でも未来でもなく、今俺の目の前にいるお前を愛している。お前だけが俺の唯一だ」
「でも、でも『忘れたくなかった』って、それって、それって―――」
「願掛けだと言っただろう? 俺が忘れたくなかったのは、お前の愛らしい嫉妬だ」
「ふぇ……?」
「俺の『初めて』が欲しいあまり過去から『俺』を呼び出す程想い悩んでいたお前のいじらしさを、俺は忘れたくなかったんだ」
抱きしめる腕に力を籠める鍾離は、自分が幼子だった頃、『未来』のウェンティが見せたソレではなく、まだ見ぬ自分だけの『ウェンティ』が抱くであろうそれを知らないまま生きるのは嫌だったのだと笑った。
そして変えることのできない過去でウェンティが苦しみ続けることも嫌だった。とも。
「だから、俺は俺に願掛けをした。『俺』が俺を裏切らなければ、今日この時に封じた記憶が戻るように」