秘境の中は陽の光が届かない。その為、時間の経過を正確に知ることは困難だ。
しかし、パイモンは先程から度々大あくびを繰り返していて、空も微睡を覚える自身にきっと外は夜中なのだろうと推測できた。
体感が正しければ、自分達が秘境に入ってから四半日が過ぎるか否かといったところか。ウェンティは自分達よりも早く此処に居たから、長くとも後半日で出ることができるはずだ。
空は器用にも宙に浮いたままうつらうつらしている相棒の名を呼んだ。
「パイモン」
「! うわぁ!! なんだ!? どうした、旅人!?」
「び、びっくりした……いきなり大声出さないでよ……」
驚かせないように配慮したつもりだったが、無駄だった。
パイモンはそれはそれは盛大に驚き、悲鳴のような大声を秘境に響かせた。
その絶叫を間近で聞いた空は耳が痛くなったと言わんばかりの仕草を見せ、寝惚けている相棒は舌足らずながらも素直に謝ってくれた。
こういう素直なところはパイモンの良い所だと思う空。
大切な相棒はもう眠気が限界を迎えている。このまま放っておけばいずれ地べたに落下して怪我をしてしまうだろう。
念のため秘境の内部を4人で改めて探索し、ウェンティが言った通りの状態で間違いないことは確認済みだ。
命の危険となるようなトラップもない為、時間が来るまで眠りについても問題はない。
むしろ眠気を耐え続けている方が判断力が低下していざという時動けない可能性が高いため、眠った方が良い気がする。
そうと決まれば、直ぐにでも行動に移すべきだ。
空はまた舟を漕ぎだしているパイモンを起こさぬように少し離れたところで軽口の応酬を続けている元七神2人の元へと向かった。
「うぅ……お酒が呑みたいぃ……本当なら今頃璃月港で美味しいごはんとお酒にご機嫌になってたはずなのにぃ」
「後半日もすればお前は外に出られるだろう。あと少し辛抱しろ」
「そうだけど! でも、先に出られたとして、置いて行けるわけないでしょ?」
「ウェンティ、鍾離先生、ちょっといいかな?」
口を開けば言い合いをする癖に、何故一緒に居るのだろうか。
二人に対してますます謎を深める空は、遠慮がちに会話に割って入るとパイモンと一緒に少し休むことを伝えた。すると二人は先程の難しい表情から一転、心配そうな顔をしてゆっくり休むよう言ってくれた。
既に限界を迎えているパイモンのために、会話を楽しむことなく礼を述べて踵を返す空。一応、鍾離とウェンティどちらにも釘を刺したのは、自分達の目が無いからと殴り合いの喧嘩をされては敵わないと思ったからだ。
「お前たちの眠りを妨げる様な事はしないから安心しろ」
「そうそう。ちゃーんと大人しくじいさんの相手してるから心配しないで」
それが一番心配だと思いながらも、自身も眠気が限界だった。
空は、くれぐれもよろしくと手を振って返事をすると、足がもう地面に着きそうな位置でふわふわと漂っているパイモンを起こさぬよう抱き上げると、万が一神々の喧嘩が勃発しても直ぐに被害が届か居ないだろう場所に移動して眠りについた。