「あ、あれぇ!? オイラ、急に元気になって来たぞ!!」
声を裏返しながらも元気をアピールするパイモン。
相棒の努力を無にするわけもなく、空は「良かった! じゃあ3人で入ろう!」と間髪入れず秘境へ侵入するべく手を伸ばした。
疲労困憊だったはずなのにそんなに直ぐに回復するのか?
そう尋ねたそうな鍾離の視線が背に刺さっていたが、空とパイモンは気付かない振りを貫いた。
半ば強引に侵入した秘境。
風神バルバトスが――もとい、ウェンティが四半日以上攻略できずにいる其処は、一体どんな魔境なのだろうか。
そして大切な友人は、無事だろうか……。
様々な懸念を胸に気を引き締める空の手には降臨の剣が握られていて、万が一の奇襲に備え身構えていた。
「あれ? 旅人にパイモンじゃないか。どうして戻って来たんだい?」
「え……?」
「ぎ、吟遊野郎!?」
秘境に侵入し、目が慣れるよりも先に耳に届いたのは聞き心地よい声だった。
困惑しながらも声の主が無事であることに安堵する空と、安堵よりも驚きが勝ったパイモンの絶叫。
耳元で叫ぶのは勘弁して……と苦笑いを浮かべるも、相棒はふよふよと少し離れたところで手を振っているウェンティのもとへと飛んで行って気づくことは無かった。
「お前、無事なのか!? 本当に、吟遊野郎か!?」
「見ての通りボクだし、この通りピンピンしてるよ」
「良かったぁ……。オイラ達、お前が戻ってこないから何か有ったのかって心配してたんだぞ!」
「おや。それは悪いことをしたね。でも、ありがとう。君達の優しさには心が震えるよ」
パイモンの言葉にニコニコ笑って感謝を伝えるウェンティに、空も歩み寄って改めて無事を確認した。返ってくるのは先と同じ言葉だ。
良かったとパイモンと顔を見合わせ空は笑い、秘境の調査状況はどんな感じかと本来の目的の確認に移った。もし労力が足りないのであれば、力を合わせて早く終わらせてしまおう。と。
「この秘境はもう心配要らないよ。数日もすれば、再び地底に沈むと思う」
「え? 調査も対処も終わってるってこと?」
「そうだよ」
秘境については心配要らないと頷くウェンティ。
しかし空はそれに困惑を見せる。攻略が済んでいるのなら何故ウェンティは此処に留まっていたのだろうか?
尤もな疑問を覚える空に、ウェンティが見せるのは苦笑い。
「聞きたいことがあるならちゃんと口にしないとダメだよ?」
「! ごめん。えっと、ウェンティはどうして秘境から出なかったの? 対処したのなら外に出ればよかったのに……」
「それは―――」
「おそらく制限が掛かっているのだろう。半日、いや、一日は外に出られない、と言ったところか?」
質問にウェンティが応えようとしたその時、説明を遮る男の声が聞こえる。
空とパイモンは、問題は秘境だけではなかったことを思い出して顔を青くした。