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モラクスに戻る。つまりそれは、凡人になる前の――鍾離になる前の姿に戻るということ。そしてバルバトスに戻るということは吟遊詩人のウェンティではなく―――。
「どうする? この『取引』に応じるか? それとも……」
「! もどる! もどるから、そのまま―――」
眼前の腕から岩の文様が薄く消え入りそうになってゆくのを目にしたウェンティは『もどしちゃやだ』と縋ってきた。
その必死な様子に鍾離は満足そうに笑みを深めると、消えかけていた文様が再び彼の逞しい腕に浮き上がった。
ウェンティはその文様をなぞるように触れ、熱に潤んだ瞳を伏せてると唇へとそれを引き寄せた。
ちゅっと皮膚に吸い付くように触れるウェンティの唇が感じるのは、『人』の肌とは異なる質感。
岩壁のように硬化した皮膚は、お世辞にも触り心地が良いとは言えない。だが、それでも無機物からは感じないぬくもりに昔を思い出して苦しい程胸が締め付けられた。
「モラクス、だぁ……」
久しく感じること無かった硬いぬくもり。唇を離すウェンティが見せるのは、それはそれは幸せそうな笑みだった。
愛おしそうに再び唇を寄せてくる恋人に、鍾離が覚えるのは激しい劣情。
ごくりと咽喉を鳴らし、極上の馳走を前にした飢えた獣のように己の唇を舌で舐めて欲情を露わにする男は恋人の唇から腕を遠ざける。
取引に応じると言ったのはウェンティだ。彼だけが良い思いをするのは契約違反というものだ。
「さっさと姿を戻せ、バルバトス。俺もお前の風が俺で染まってゆく様を早く見たい」
「もらくすのえっち。どれだけエッチするつもりなの?」
「そうだな……。とりあえずは、子種が空になるまでは休ませるつもりはないとだけ言っておく」
「えぇ? それってどれぐらいかかるの?」
「鍾離の姿であれば精々1日だろうが、―――この姿となると、数日か?」
腕だけだった人外の姿が、一瞬にして全身に行き渡る。瞬きをする刹那の間でウェンティに覆い被さるのは『鍾離』ではなく『モラクス』の姿をした恋人だった。
自分を見下ろす眼差しに宿る神々しさと雄々しさに、ウェンティは息を呑んで己の口を手で覆い隠した。ドキドキし過ぎて口から心臓が飛び出てしまいそうだ。なんて呟きながら。
「さぁ、バルバトス。俺は『契約』を果たしたぞ?」
「もぉ……せかさないでよぉ……」
「仕方ないだろう。昔のお前の姿を再び抱けるとなれば、興奮せずにはいられないからな」
その証拠に。と鍾離は己の股座で臨戦状態となっている男根をウェンティの性器に擦りつけてきた。
「昔の姿に戻ればすぐにでもナカに挿入ってやるから覚悟しろ」
「ばか」
「馬鹿でも阿呆でもいいから、早くしろ。…… それとも、一度この姿で抱かれたいのか? モンドの詩人よ」
下々の民を見下ろす神の眼光で尋ねてくる鍾離は存外楽しんでいるようだ。
ウェンティはそれにもう一度「ばか」と笑い、琥珀よりも黄金に近い眼差しを覆い隠すように両手を伸ばした。
抗うこともせず視界を奪われる鍾離の口角は楽し気に歪んでいる。