TREMOLO [ANNEX]

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幸せ家族計画



「うっ……、っ、バルバトスっ、待っていろっ、今、緊急の抑制剤を持ってきてやるっ」
 愛おしい番に何か良くないことが起こっているのかもしれない。
 急ぎ医者に見せるべきだと焼き切られそうな理性を必死に繋ぎ合わせてウェンティの身体を心配する鍾離は、番のフェロモンに屈しそうになる自分の本能を心底呪った。
 ウェンティを大切に想っているのに、かけがえのない存在だと想っているのに、何故自分の体躯は劣情を訴えてくるのだろうか……。
 意思と反して覚える下肢の痛み。番を愛し尽くしたいと勃起した男根が作る不自然な隆起に反吐が出る。
 しかし、本来オメガの発情期に発せられる性フェロモンはどんな強固な精神を持つ者ですら狂人に変えてしまう程強力な催淫効果があるものだ。
 もし今の鍾離と同じ状況に常人が置かれれば、悲しいことに相手はただめちゃくちゃに抱き潰され、孕むまで種付けされ続けるだろう。
 それを考えると、鍾離の理性とウェンティへの愛は尋常ではないと言っても過言ではないはずだ。
 ただ、心から愛しているからこそウェンティを思いやれない自分に嫌悪を抱いてしまうのだろう……。
 荒い呼吸を繰り返し、切れ切れな声で自分を呼ぶ番の姿にごくりと咽喉を鳴らす鍾離。
 さっさと立ち上げれと自分を奮い立たしているのだが、思うように動かない身体に吐き気すら覚えた。
 しかし、自己嫌悪に苛まれている彼に掛けられるウェンティの言葉は思いがけないものだった。
「だ、だめ……、もら、……もらくす、だめっ……、よくせーざい、とりにいっちゃ、らめぇ……」
 震える手が伸ばされ反射的にそれを握る鍾離の耳に届くのは上擦った嬌声。どうやら手を握られただけでも快楽が生まれてしまうようだ。
 情事の最中にしか聞くことの無い番の甘い声色に、鍾離は意識が遠退く感覚を覚えた。
「―――っ、ダメだっ。直ぐに、医者に見せないとっ」
「だ、めっ! おねがい、おねがいもらくすぅぅ」
 まずはウェンティの身体を最優先に考えろ!!
 精神と肉体を支配しようとする本能を必死に抑え込む男の理性はなんと強靭な事か。
 愛おしい番の声に今にも屈してしまいそうになってしまっているが、しかしそれは当然のことだと己の弱さを認める鍾離。
 弱々しい力ながらも自分の手を握り返してくるウェンティに、抑制剤が効けば楽になれるからと宥めるように言い聞かせる。
 だがウェンティはそれを拒むようにいやいやと首を振っている。
 それに鍾離は何故だと声も切れ切れに問いかけた。こんな重い発情期に陥ったことなど無いだろうに何故緊急抑制剤を拒むんだ? と。
 するとウェンティは瞳に溜めた涙をポロリと目尻から零し、震える声でこの発情期は意図せぬものではないと言ってきた。
「バルバトスっ?」
「いつもの、くすり、のんでない……、のんでなから、だから、だからなのぉ」
「! 何故そんなことをっ? 身体に負担がかかるだろうっ!?」
 ウェンティは、普段服用していた抑制剤を今回は飲んでいなかったと言う。
 故意にこの状況を作り出したと告げられた鍾離は、何故だと憤りを露わにした。
 オメガ性の―――ウェンティのフェロモンは確かに番である自分にしか感知できない。
 それ故、フェロモンに当てられた他者に傷つけられることは確かにない。だがそれでも身体への負担は大きく、発情期が終わるおおよそ1週間、決して消えることの無い欲情に苦しむことは知ってるはずだ。
 それなのに何故こんな―――敢えて苦しみを享受するような真似をするのか。
 鍾離はウェンティの手を強く握り、もっと自分を大切にしろと声を荒げた。



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2024-04-02 公開



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