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「ねぇ。なんでボクが『愛想を尽かした』って考えになったの? ボク、何かした??」
「我侭を……」
「うん? 我侭言ったのがダメだった? そんなに言ってないつもりだったんだけど―――」
「逆だ。まったく言わないだろう? だから、……だから、もう甘えるのも嫌になったのかと思ったんだ」
説明しながら表情を曇らせる鍾離。ウェンティは先程と同じく驚きの表情を見せ、瞬きを繰り返しながらも「えっと……」と恋人の説明を正しく理解しようにもできなくて苦労しているようだ。
「つまり、我侭を言わないから甘えてないって思って、甘えないってことは愛想が尽きたんだろうって感じで合ってる?」
「ああ」
自分が理解した内容を言葉に出せば肯定が返ってきて一安心。何とか恋人の考えを理解できたようだ。と。
しかし、安心してばかりもいられない。目の前の恋人の表情は神妙を通り越して深く落ち込んでいるようだったから。
「あのさ、モラクス。確かに今日はあまり我侭言ってないかもしれないけど―――」
「『あまり』ではなく『まったく』言ってない」
「もー、分かったってば。確かに今日は『まったく』我侭言ってないけど、それでもボクはいつもよりもずっとずっと甘えてるつもりなんだけど?」
幼子に言い聞かせるように視線を合わせて言葉を紡ぐウェンティ。鍾離は複雑な心中をそのまま表情に出していて、眉間に寄った皺をぐりぐりと指で押してやる。
「あのね、普通の人は離島から鳴神大社まで抱いて連れて行けなんて言わないからね?」
「それはお前が歩くことが難しいからだろう。そしてその原因は俺にあるんだ。むしろこれは当然のことだ」
「モラクスにとっては当然のことでも、他の人にはそうじゃないから」
苦笑を漏らしながらもウェンティは伝える。『普通』じゃないと知りながらも彼に自分を抱いて山を登れと言ったのは、歩けないからだけではないということを。
「ボク、君とこうやってくっついてるの、結構気に入ってるんだ」
「それは俺の良いように捉えても良い事か?」
「モラクスの『良い事』が何かは分からないけど、今言ったことは嘘偽りないボクの本心だよ」
頼りない眼差しが愛おしい。ウェンティは鍾離の頬を両手で包み込むと「ボクって好きな人にはくっついていたい派だったみたい」とはにかんだ。
「これってモラクスにとって『良い事』?」
「そうだな。最高の事だな」
「ならよかった」
満面の笑みを見せるウェンティ。するとその唇はあっという間に塞がれてしまった。もちろん、鍾離の唇で。
啄むように何度も口づけてくる恋人にウェンティは笑い、これ以上はダメだと恋人の唇から逃れるように顔を背けた。これ以上は変な気分になるから。と。
「『変な気分』とは、『性交がしたい』という意味か?」
「直球は止めてよ! ……でもまぁ、そうだよ。あんなにしたのに一日経たずにまたしたくなるなんて絶対ボクの身体はおかしくなっちゃったんだ」
「おかしいことなど無いだろう? 俺も抱きたくて堪らないんだから」
「もう! モラクスのエッチ! スケベ! 絶倫!! ボクの身体をおかしくした責任、ちゃんととってよね!?」
性欲なんて感じたことなど今までなかったのに!
そう喚きながら恋人に八つ当たりをするウェンティに「責任をとって治めろという事か?」と雄の顔を見せる鍾離。慌てて「違う!」と恋人の顎を押し退ければ、残念そうな声が聞こえた。
「まったく! 油断も隙も無いんだから!」
「番に誘われてその気にならないわけがないだろう?」
「誘ってない! そもそもまだモラクスがナカにいる感覚があるんだからね? せめて今日一日は休ませてよ!?」
大事な番に無理をさすなと睨むものの、鍾離の目からは雄の色が消えてくれない。なおも口付けて来ようとする恋人から逃れるように暴れるのだが、抱き上げられている状況では無意味な行動だろう。
必死に口づけを回避しようとするウェンティの頬にこめかみに落とされるそれはまるで雨のよう。
何度も執拗に口づけられ遂には「外でなんて絶対ヤダ!」と涙目になって漸く止まったわけだが、きっと今夜もその大きすぎる愛で抱き潰されるのだろうと予感してしまうウェンティだった。