TREMOLO [ANNEX]

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風神が嫉妬する話

25



 快楽に抗いながら必死に『待って』と、『止まって』と伝えるものの、口から出た音が言葉になっているかは分からない。
 本気で嫌がっていると伝わっていないとウェンティ―は内心青褪める。お願いだから止まってと恋人に伝えようとするのだが、彼にしがみ付いて喘いでいては真意が伝わるはずもない。
 雄の顔をして自分を攻め立てる鍾離に、快楽と羞恥と恐怖で感情はぐちゃぐちゃだった。平静な状態であれば鍾離が言った気配を感じ取ることができるだろうに頭は恋人が齎す快楽に占領されていて風を感じる事すらままならない。
 このままでは此方に向かってきている誰かに理性の欠片もなく夢中で恋人と交わる姿を見られてしまう。ウェンティはその様を想像して『怖い』と『嫌だ』と嗚咽を漏らした。
 しかし、それでも鍾離には伝わらない。むしろ羞恥により感度が上がったと愉悦の表情を見せるぐらいだ。
 これはもうどんなに抗おうとも他者に見られる運命からは逃れられないのかとウェンティが諦めそうになったその時、小さくだがウェンティの耳に鍾離が言った『3つの声』が届いた。
「そんなに怒るならついて来なくても良かったんだよ?」
「若に任せてまた届け忘れていたということになったら大問題でしょうが。この荷物、八重宮司に今日中に届けるようにと言われているんでしょう?」
「おやおや。今回の件で私は随分トーマの信用を失ってしまったようだね」
「! そういうわけじゃなくて! 俺が言いたいのは届けるのは俺とお嬢だけで十分だってことで―――」
「なるほど。私が信頼できないから綾華に同行を求めたということですか」
「だから違いますっってば!」
「お兄様、そんな意地悪をなさらないでください。トーマはお兄様の身体を心配して休んでいて欲しかっただけなんですから」
 何やら楽し気な声が3つ。それはウェンティが以前一人稲妻を訪れた時に面識を持った神里家の当主とその妹君、そして家司の声だ。
 彼らの声は行為を目撃されることへの抵抗を諦めかけていたウェンティを覚醒させる。
 だが、唇から零れる甘ったるい声は愛も変わらず言葉を紡ぐことは無くて、下手すれば近づいてくる彼らの耳に届いてしまうかもしれない。
 ウェンティは己の口を塞ぐように両手で覆い、必死に零れる声を殺した。
 しかしそれを鍾離は面白くないと感じたのか、なんとしてもこちらに近づく者達に恋人の声を届けようと行為を荒々しいものに変えてゆく。
 酷い。と快楽に悶えながらも鍾離を睨むウェンティ。
 するとその視線に鍾離はにやりと意地悪く笑い、ウェンティの腹に手を添えるとそのまま抑えつけてきた。
 その瞬間、胎に納まった男の熱がより鮮明になった。浮き出る血管も、それに通う脈動も胎は受け取り、一気に昂ぶりを押し上げた。
(だ、だめっ、イく―――っ)
 一瞬止まる息。おそらく自分はこの後悲鳴のような声と共に果てるだろう。そしてその声は知り合いの耳の届き、恋人に抱き潰されている淫靡な姿を彼らに見られてしまうのだろう……。
 白む視界と思考の中、ウェンティは今度は丸1日無視してやる! と意地悪な恋人への反抗を決意した。



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2023-09-23 公開



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