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言葉を発してしまえば自分が泣きそうになっていることがばれてしまう。
声を震わさずに喋る自信がないウェンティはただ笑顔を二人に返すのだが、その表情はいつものような柔らかさは皆無だった。
「バルバトス、こっちに来い」
「うぅ……」
案の定、恋人にはバレてしまった。
髪を撫でていた手でそのまま肩を抱かれ引き寄せてくる鍾離に逆らわずに身を任せれば、どうしたんだと笑われた。
絶対分かっているくせにと思ったものの、情けない涙声など聞かせたくはなかった。
仕方のない奴だと言わんばかりにあやしてくる鍾離の手は何処までも優しい。感極まっている状態でこんな風に優しくされたら我慢できなくなるから本当に止めてもらいたいと思うウェンティだが、心とは裏腹に行動は正直に彼にしがみ付いてしまっていた。
「神子から聞いていましたが、随分変わりましたね。モラクス」
「そうか?」
「ええ。以前の貴方はバルバトスを見る度顔を顰めていましたから」
何があってよく思っていなかった相手をそこまで寵愛するのか知りたいと尋ねてくる影。
純粋な疑問なのだろうが、言葉は鋭利なナイフのようだ。彼女としては純粋に懐古しているだけなのだろうが、昔は鍾離に嫌われていたなんて改めて聞かせないでもらいたい。
「俺は昔からこれを好いていたが?」
「「え?」」
不思議そうな鍾離の声に驚きの声を上げる影とウェンティ。重なる声に鍾離は自身の腕に抱いた存在に視線を落とし「何故お前まで驚く」と苦笑を漏らした。
「だ、だって、バアルゼブルじゃないけど顔を合わせる度怒られるからてっきりよく思われていないんだと思っていたから……」
「確かにいつも怒っていたとは思うが、それは神としてお前がいい加減だったからだ」
「ほら! ほらやっぱり! ボクが神様らしくしないから嫌ってたんじゃないか!」
「何故そうなる。あれは年長者からの指導だろう? デカラビアンによって荒廃してしまったモンドを蘇らせる命を背負うにはお前はあまりにも若すぎたからな」
隣国のこととはいえ気に掛けていたと言う鍾離は、アレは神としての務めを果たしていただけだと言葉を続け、個人の感情だけを言えば当時から惹かれていたと言い切った。
それにウェンティは言葉を失い暫く赤い顔で口をパクパクさせ、やっとの思いで言葉が出たと思えば「そんなの知らない!」と喚いていた。
「いっつもいっつも怒ってばっかりだったし、他の七神とは楽しそうに話してるのにボクと目が合えば顰め面してたじゃないか!」
「怒っていた理由は今言った通りだ。顰め面は記憶に無いが、おそらくお前が他の七神に近づくことを良く思ってなかったんだろうな」
愛らしくて人懐っこいお前を他に捕られたくなかった。
そう昔を懐かしんでいる鍾離は唖然とする影に向き直ると、
「そういうわけだ、バアルゼブル。俺は何も変わってはいない。七神という重責を降りることで岩神ではなくただの一魔神に戻っただけだ」
清々しい程の笑みを浮かべて言い切った。そしてその笑みに牽制が含まれていると、影は気づいただろうか?
「そうですか……。分かりました。不躾なことを聞きましたね。すみません」
「いいや。これも分かっていなかったようだからいい機会だった」
「バルバトス」
「! な、何?!」
「貴方はつくづく苦労する星の元に生まれたようですね」
影が見せるのは不憫だと言わんばかりの哀れむような表情。何故そんな顔をするのだろうとウェンティは困惑するのだが、「強く生きなさい」と頭を撫でられ驚きの余り思考は停止した。