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鳴神大社に到着すれば待っていた八重に連れられ神職者以外は立ち入ることが殆どない家屋に通された。そこには美味しそうな料理が並んでおり、茶の他に酒まで用意されていて驚いた。神域で酒を吞むなど許されるのかと尋ねれば、稲妻では神事に酒は欠かせないものだとにやりと笑われてしまった。
国によってその風習が異なることは重々承知していたが、これは嬉しい差異だと酒瓶を眺めるウェンティ。まずは乾杯だと八重に首根っこを掴まれ座らされたのは何故か鍾離の隣ではなく彼女の隣だった。どうして? と八重に疑問を投げかける前にその言葉を口にしたのは鍾離で、隣に来るよう手招きをされたウェンティ。
恋人に呼ばれるまま立ち上がろうとしたのだが、八重がそれを阻止するかのように肩に手を添え体重をかけてきたから叶わなかった。
「八重宮司」
「そう睨むでない、鍾離殿。詩人殿は無類の酒好き。用意した手前こんなことを言うのはなんじゃが、神域で羽目を外されては困るんじゃ」
「何故それがお前の隣に座らせる理由になる」
「昔の貴殿になら任せられたが、今は些か心配じゃ。酔った詩人殿に強請られて拒否できるとは到底思えん」
だから自分が酒を取り上げられる場所に座ると言いウェンティの隣に腰を下ろす八重。彼女はせめて向かいに座らせたのだからそれで我慢しろと言ってくる。
鍾離はその言葉に反論しようとしたのだが、いつの間にか彼の隣に座った影からここは八重の領域であるが故彼女に反抗するのは得策でないと助言されてしまい口を噤むことになった。
「では、再会を祝して今日は存分に語らおうぞ」
八重による乾杯の合図を皮切りに、始まる宴会。
繊細な見た目で視界でも楽しめる稲妻料理に舌鼓を打ち、茶を酒を呑みかわす面々。
昔話に花を咲かせて笑い合い、過去の次は未来だと己が統治している、またはしていた国の展望を熱く語らった。
存外真剣に聞いてくれる八重に驚きながらもウェンティもモンドへの想いを口にして、実に楽しい時間を過ごす。
楽しい空間で飲む酒はいつも以上に美味であり、ついついペースが速くなる。早くも空になった酒瓶におかわりを欲して新しい酒瓶に手を伸ばせば、八重に手の甲を叩かれた。
「いたいよ!?」
「お主に『呑むな』と言ったところで無駄な事とは分かっているが、せめて味わって呑め。そう湯水のように流し込まれては折角の美酒が泣いてしまうと言うものじゃ」
「えぇ? ちゃーんとあじわってるよぉ?」
「呂律も怪しくなっておいて何を言うか。お主は顔に出ぬから性質が悪い」
「ぜんぜんへーきだし! まだぜんぜんよってないからおさけー! おさけちょーだい!」
へらへらと笑いながら再び酒瓶に手を伸ばすウェンティ。
八重は彼から酒を遠ざけるように遠ざけ、昔よりも酒に弱くなったと眉を顰めた。
普段は呑んでいないのかと鍾離を見る八重。鍾離は二人の様子にため息交じりに「そんなわけがないだろう」と否定した。
ほぼ毎日酒を嗜んでいると教えてやれば、八重が抱くのは当然の疑問。ペースは確かに早かったが、酒量はそこまで多くはないはずだ。それなのにウェンティの様子からは既に酔いが回っているように感じる。それほどまでにアルコール度数が高い酒を用意した覚えもないのにいったいなぜこれほどまで酔っているのだろう? と。
「おそらく、体調が優れないのでしょう。万全でないのにああも酒を煽っては酔うのも当然です」
「なんじゃ、バルバトス。お主、体調が悪いのか?」
「えぇ? ボクはぜーんぜんげんきだよぉ? おさけくれたらもーっとげんきになるから、ちょーだい?」
「ダメじゃな。話にならん」
ケラケラと笑いだすウェンティに、八重は頭を抱えた。自分が酒量をコントロールすると言いながら、結局酔わせてしまったのだから多少なりとも責任を感じているのだろう。八重はテーブルに突っ伏しそうなウェンティの頭を軽く叩き、酔いを覚ましに行くぞとその腕を掴んだ。
「わざわざ宮司殿の手を煩わせるわけにはいかない。その役目は俺が賜ろう」
「言い分は分かるが、これは妾の失態じゃ。貴殿に尻拭いをさせるわけにはいかん」
そう言い切ると八重は鍾離の返事を待たずにウェンティを引っ張って部屋を後にしてしまった。
部屋には鍾離と影が残され、状況的に影を放って追いかけるわけにもいかない。苦虫を嚙み潰したような表情で居住まいを正す鍾離に影は気付かれない様に薄く笑った。