TREMOLO [ANNEX]

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風神が嫉妬する話

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「随分遅かったのぉ。まさか神聖な場所で如何わしい真似をしていたわけじゃあるまいな?」
「神子。彼らは『人』になったのですよ。『人』とは欲を抑えられない生き物ですから所構わず発情してしまうのは仕方ない事です。大目に見てあげなさい」
「ちょっと! 偏見が凄いね!?」
 宴を開いていた部屋に戻るなり八重は恨めし気な眼差しを向けてきて、嫌味を投げてくる。それに鍾離とウェンティが反応を示すよりも先に茶を啜っていた影が自身の眷属を窘めるのだが、それがあまりにも偏見に満ちていて思わず声を上げてしまうのは当然だろう。
 二人が想像しているようなことは無かったと膨れっ面を見せるウェンティ。それに意地悪な八重は「お主は期待しておったのにか」と穿った見方をしてくるからつっこむのも一苦労だ。
 更には、隣にいる恋人は大真面目な顔で「期待していたのなら応えられるが」なんて言って八重に乗ってくる。ツッコミが足りないと嘆くウェンティに、理解できていない鍾離と影はきょとんとしており、理解している八重はケラケラと笑っていた。
「本当、君って性悪だよね!?」
「何を言うか。社の守護者として穢れを持ち込まれぬよう警戒しておるだけじゃぞ」
「恋人の睦事を『穢れ』と称するのは些か乱暴ではないか? この地に生きる命の大半はその『穢れ』から誕生するんだぞ?」
「それは俗世の理じゃろう。ここは神域。俗世と同じにするでない」
 鍾離の真っ当な意見にツンとそっぽを向く八重。論争よろしくとばかりに更に言葉を続けようとした鍾離を止めるのは、彼の恋人だ。価値観が異なる相手との言い合い程時間を無駄にすることは無いよ。と。
 確かにその通りだと納得したのか、鍾離は言葉を噤みウェンティの手を引くとそのまま先程まで自分が座っていた場所へと腰を下ろした。
 手は繋がれたままだから当然ウェンティはその隣に座ることになるのだが、鍾離の隣には影が座っているから席は空いていない。
 必然的に彼の膝に座らされ、二人の視線が突き刺さって居た堪れない気持ちになってしまった。
 応戦する気満々だったろう八重は毒気を抜かれたと肩を竦ませ、自身の主を隣に呼ぶ。このまま目の前で睦み合いをされては堪ったものじゃないと言いながら。
「ほれ、隣の席が空いたぞ。さっさとそこから降りんか、バルバトス」
「い、言われなくてもちゃんと降りるし! って、ちょ、モラクス、放してよ!」
「別に構わんだろう? 此処には気心知れた者しかいないんだ」
「戯け者。構うから席を空けてやったんじゃろうが。駄々を捏ねずに我慢を見せたらどうじゃ?」
「やはり『人』は耐えることが苦手なようですね。どうです、バルバトス。私の認識は間違ってなかったでしょう?」
「もー! だからツッコミの手が足りないんだってば!!」
 ウェンティの嘆きの声はそれはそれは良く響き、遅れて八重の楽し気な笑い声が聞こえてくればその声を聞いた者達はおそらく一癖も二癖もある宮司様に客人が遊ばれているのだろうと同情を覚えたとか。



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2023-10-03 公開



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