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「お久しぶりです。鍾離先生」
「急な訪問になり申し訳ない。用件は―――、どうやら理解されているようだな。迷惑をかけて申し訳ない、ラグヴィンド殿」
「いえ、きっと来られるだろうとは思ってましたから大丈夫です」
ディルックが迎えたのは異国からの旅行客――ではなく、己の伴侶を迎えに来ただろう鍾離だ。
深々と頭を下げる彼にディルックは相手の正体を知るだけに恐縮してしまう。
顔を挙げてもらうよう促せば、申し訳なさそうな顔をして鍾離は笑った。
それを見たディルックは、神と対峙する必要はなさそうだと内心安堵する。もしも彼が自分の想像と異なる振る舞いをしようものなら、力づくで酒場から――いや、モンドから叩き出していたところだ。
できるできないは、まぁ、置いておいて。
「連れ帰ってもいいか?」
「勿論です。ああ、でも、すみません。義弟が少し酒量を見誤ってしまって、酔い潰れてしまわれまして……」
「! そうか……。本当にすまないことを。義弟君にも随分心配をかけたようだ」
ウェンティが『酔い潰れた』という言葉に目を見張る鍾離は、笑みを悲し気なものに変え、ディルックとガイアに改めて感謝を伝えた。
きっと彼はディルックの言葉だけで恋人が呑んでくだを巻いて大泣きしたことを理解したのだろう。
苦しささえ感じるその表情を目の当たりにしたディルックは、やはり深い愛情を注いでおられると笑みを浮かべた。
「鍾離先生、もしよろしければ宿を手配しましょうか? 風が吹き荒れる最中、眠ったままの相手を連れての道中は危険ですから」
「そうだな……。厚意に甘えさせてもらっても構わないだろうか?」
「勿論です。明日はきっと今が嘘のように凪いでいるはずですから、ね」
「ああ、そう願う」
モンド一と噂される貴公子の気遣いと言葉遊びに鍾離は笑い、今一度彼に礼を告げるとその隣を通り過ぎた。
愛おしい存在を迎えに来た男が向かう先は、決まっている。
「ガイア殿」
「どうも、鍾離先生。わざわざ遠い所をお越しいただいて」
「随分世話になったと義兄君から聞いた。……相手をしてくれて感謝する」
鍾離が立ち止まった先にはテーブルに突っ伏して眠りこける愛しい番と、苦笑いを浮かべる騎士の男性と、そして何やら敵意を剥き出しにしている若き騎士の青年がいた。
手を伸ばし、起きる気配のないウェンティの髪を撫でる鍾離は隣でお役御免だと伸びをするガイアに礼を述べた。
するとガイアは自分が相手をしたのはほんの数時間だと言い、愚痴やらなんやらを聞いて宥めていたのは義兄だと訂正した。
『自分が』と手柄を主張しない義兄弟に、慎み深い青年達だと鍾離は思う。そして、彼らは信頼に足る存在だ。とも。
自分は何もしていないと言うガイアに、それでも礼を伝える鍾離。するとガイアは酔い潰した手前素直にその言葉を受け取れないと苦笑いを濃くした。
「先生が迎えに来ると知ってりゃ、もうちょい相手をしたんですがね」
「いや、むしろ眠ってくれていて助かった。……意識があればおそらく連れ帰るのが難しかっただろうからな」
「ああ。相当荒れてましたからね、この吟遊詩人様は」
眠っていなくともどうせ最終的には元鞘よろしくとばかりにいちゃついてたと思うぞ。と内心思うガイア。もちろんそれを口に出すような無粋な真似はしないが、眠るウェンティを見つめる鍾離の眼差しだけでおなか一杯だ。
さっさと帰るなりなんなりしてくれ。そして俺にゆっくり酒を呑ませてくれ。
仕事終わりで疲れていたところに、疲労を上乗せされればついつい嫌味を言いたくなるというもの。だからつい、「二度目は勘弁してくださいよ」とチクリと彼を突いてしまう。まぁこれぐらいは可愛い嫌がらせだと目を瞑ってもらいたい。