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「エウルア殿、我が伴侶への気遣いに感謝する」
「その『伴侶』とやらを泣かせた報いは受けてもらうわよ」
「君がそれで納得できると言うのなら、喜んで」
「ふん。良い心掛けね」
対峙する男に剣を構えるエウルア。ディルックもガイアも彼女に落ち着けと訴えるのだが、その声を止めるのは鍾離だった。
鍾離の態度にエウルアが覚えるのは不信感。何を考えているの? と、自分からの『粛清』を受けると言った男を睨みつけた。
エウルアの眼光にも臆することなく、鍾離は静かな声で「必要な事だと判断したためだ」と言う。
自分が愛おしい存在を傷つける言葉を口にした事実は変わらない。そして、それにより愛おしい存在が此処で涙した事実もまた変えることはできない。
ディルックやガイアのように、互いの言い分を理解して中立な立場を保つ者が居ることはありがたい。だが、エウルアのように愛おしい存在のために怒ってくれる存在が居ることも鍾離には喜ばしかった。自分の愚行を面と向かって責める者は居ないと思っていたからだ。
エウルアは再び床を蹴る。美しい剣の刀身が振りかざされ、周囲からは悲鳴が聞こえた。その一撃が迷うことなく彼の首を狙っているからだ。
いくら何でもやり過ぎだと拳を作るディルック。エウルアの剣は、いくら『友人』のためとはいえ普通の人間であれば命すら奪いかねない一撃だったから。
まさか彼女は鍾離が『神』であることを露呈させる気なのだろうか?
当人に止められたとはいえ、それを見過ごすことはできないと彼女を止めに入ろうとするディルックとガイア。
だが、それを察したのだろうか。鍾離は掌を後ろに向け、二人を制してきた。
「っ―――、鍾離先生っ!?」
エウルアの剣は、今まさに彼の首を取ろうとしている。ディルックの焦りを滲ませた声は辺りに響き、民衆からの悲鳴も大きくなった。
多くの者が惨劇を予期して目を逸らせる中、エウルアから視線を外すことがない人物が一人だけ居た。それは彼女からの『粛清』に応じた鍾離その人だった。
「何故避けないのっ」
「言っただろう? 君が納得できる形を取りたい。と。……君がどう思おうと俺はアレを――ウェンティを連れて帰る。だが、君の心配も尤もなものだから、君が納得できるようその怒りを受けるべきだと判断した」
「私が納得できると言うのなら、致命傷を負う覚悟もあったと言いたいの?」
「そうだな。……だが、君にはもとよりそのつもりは無いと感じたのだが、違うかな?」
「っ、大した自信ね……」
「友のために怒ることのできる君の優しさから推測したまでだ。……友が悲しむことは本意ではないのだろう?」
エウルアの剣は、鍾離の首元でそれに触れることなく止まったまま。
おそらく、鍾離を除くこの場に居た全員がエウルアが男の首を撥ねる気だと思っていたことだろう。
しかし鍾離が言った通りエウルアにその気は一切なく、初めから彼に傷一つ負わせる気など無かった。
ただ、知って欲しかっただけだ。ウェンティを傷つけ泣かせた事がどれ程罪深い行いだったかを。それは彼がモンドの神だったからじゃない。大切な友人だからこそ、彼を泣かせた存在が許せなかったのだ。
エウルアは眉間に皺を作り、「腹が立つ人ね。いつか復讐してやるから覚悟しなさい」と剣を引いた。
「次は止めないし、璃月にも帰さない。彼には帰る場所があるという事を肝に銘じておくことね」
「承知した」
忠告を真摯に受け止め礼を述べる鍾離にエウルアは納得したのかガイアに向き直ると「今日はとことん飲むわよ」と踵を返しカウンターへと歩いて行った。