TREMOLO [ANNEX]

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愛しき日々

21



 体躯を包むぬくもりに心地よい浮遊感を覚えていたウェンティは、水滴が滴り落ちる水音に意識を取り戻した。
「……モラクス……?」
「! 気付いたか」
「ここ、どこ……? ボク、どうしちゃったの……?」
 ぼんやりとした表情で見上げれば、安心したように笑う鍾離の顔が直ぐ近くに。
 ウェンティは(カッコいいなぁ……)と恋人に見惚れ、その肩にぽてっと頭を預けて「おふろ……?」と、自分達の所在を確認する。
 帰ってくるのは肯定の言葉とリップ音。髪に口付けられたと感覚で分かったから、ついまた上を向いてしまう。
 唇へのキスを強請っている事は直ぐに伝わったようで、鍾離は少し困ったような笑みを浮かべながらも望むそれを与えてくれた。
 唇に吸い付くキスは甘くて心を蕩けさせる。ウェンティは僅かな音を立てて離れる恋人の唇の感触を反芻しながら締まり無い笑みを浮かべてしまう。
「愛らしい笑い方をしてくれるな」
「えぇ? ふつーにわらっただけだよ?」
「ああ、そうか。忘れていた。お前は普段から愛らしかったな」
 甘い雰囲気を漂わせて額へキスしてくる恋人を茶化すように笑えば、悪戯な声が返ってくる。
 またそんなこと言って! と揶揄いを重ねようとするウェンティだが、自分を見つめる鍾離の眼差しとぶつかれば、彼の言葉が本心だと分かってしまって困ったものだ。
 今此処で甘い空気になれば、きっと愛し合う流れになるだろう。
 鍾離と身体を重ねることは言葉以上に愛を伝え合える行為だから大好きなのだが、流石に今日はもうこれ以上は無理そうだ。何故なら、下半身の感覚が殆どないのだから。
「モラクス……」
「分かっている。……これ以上抱かせろとは流石に言わないから安心しろ」
「ん……」
 向けられる笑みに宿るのは優しさで、ウェンティは甘えるように鍾離の首に腕を回してしがみついた。
 より密着する身体。入浴中のため、当然お互い何も身に着けていない。肌と肌が触れ合えば、湯舟とは違う熱にどうしても鼓動が早くなってしまう。
「本来お前に甘えられるのはいい気分だが、今はまるで拷問だな」
「ごめんってば」
 そう言いながらも優しく抱きしめてくれる大好きな存在。気を失うほど抱いたくせに彼はまだ自分に欲情を覚えてしまうらしいから、魔神に寵愛されるのも大変だ。
 ウェンティはしがみつくように抱きついていた腕を緩め、彼と視線を合わせるように琥珀を見つめた。
 彼の瞳は変わらず優しく、愛おしさに満ちている。だが、僅かにその瞳孔が揺らいでいて、果てのない欲情の原因が自分だけのせいじゃないことをウェンティは知った。
「モラクス、もしかしてもうすぐ発情期?」
「……あぁ、言われてみれば、そう、か?」
「たぶん。瞳孔、偶に縦に伸びそうになってるし」
 種族体が顔を出してると更に顔を近付け琥珀を覗き込むウェンティ。普段の『人』としての瞳も好きだが、同じぐらい種族体のそれも好きだったりするからよく見たいのだろう。



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2024-01-12 公開



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