腰に回した腕に添えられるのはモラクスの手で、優しく撫でるその動きからも愛されていると伝わってくる。
その温もりはボクに勇気を与えてくれたから、モラクスに『番』になりたい理由を尋ねることができた。
「モラクスはどうしてボクと『番』になりたいって思ったの?」
「それは、……それは勿論お前を愛しているからだ」
「『番』にならなくても、それは変わらないよね?」
「それは、そうだが……」
ボクの質問に口籠るように語尾を小さくするモラクス。
いつも堂々たる振る舞いを見せる岩神然とした彼らしくないその姿に、ボクの言葉に傷付いている事は分かった。
分かったけど、ボクはどうしても『理由』を知りたいから、彼からの申し出に応えることはまだできないと思った。
ボクが知りたいのは――、ボクがずっと引っ掛かっていたのは、モラクスがボクに『雌』になることを望んているかどうかだ。
トワリンが言ったようにあの子の姿に固執する必要はないかもしれないと今なら思う。
でも、そう思えるようになる前に、ボクがこの姿でいる理由を知っているモラクスがボクの気持ちを蔑ろにしているかもしれないと思ってしまったから、そこがどうしても引っ掛かってしまっているのだ。
もしモラクスがボクの気持ちよりも自分の『願い』を優先していたのなら、ボクは、ボクは―――。
「モラクスはボクに、……ボクに君の子供を産んで欲しいって思ってるの?」
「……何?」
「だから! だから、子供が欲しいから『番』になりたいんじゃないの……?」
驚きの声と共に漸くボクを見るモラクス。
抱き着いていた腕を解くと、身体ごとボクの方に向き直るモラクスを見上げた。
するとその表情は物凄く驚いた顔をしていて、ボクが口にした質問が想定外と言わんばかりだった。
「何故そうなる? 俺がいつ『子が欲しい』と言った?」
「だって、『番』ってそういう意味でしょ? 昔ボクが聞いた時、君が『結婚相手みたいなものだ』って言ってたじゃないか」
「それは言ったが、それで何故『子が欲しい』となる?」
「え……?」
モラクスの質問返しに今度はボクが言葉に詰まる。
だって、言われてみればそうなんだもん。
確かにモラクスは『番』を人の世界でいうところの『伴侶』――つまり『結婚相手』だとは言っていたけど、『我が子を産む相手』とは言っていなかった。
ボクは自分の思い込みに気付かされ、ハッとした表情でモラクスを見上げた。
「ボク、雌にならなくていいの……?」
「当たり前だろうが。そもそも俺が愛しているのはお前だ。見た目など些末な事だと何度言えば分かる」
縋るように尋ねてしまうボクに、呆れたように笑うモラクスはほっぺたを撫でてきた。ボクがあの子を大切に思っている事に対しては嫉妬を覚えるものの、それでもあの子を大切に思うボクをひっくるめて愛してると言ってくれるモラクスに、何故か彼の姿が歪んでしまった。