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「だ、だって! だって君、それっぽい事全然しないし、なんなら顔を合わせる度に顰め面するし……。ボクに興味無くしちゃったんだろうなーとか他に良い人できたのかなーとか、思うに決まってるじゃないか……」
そう。自分達はかつて恋人同士だった。だが、言ったように恋人として求められたことは無く、会う度に悪友よろしくとばかりに言い合いばかりしていた。
それでも大好きな彼に会いたくて何度も何度も璃月に足を運んだが、関係は進展することは一向に無かった。
きっと自分に魅力がないからだろう。
ウェンティがそう結論付けたのは、恋仲になって確か十数年経った頃だった。
彼の元へと通っていた足は次第に遠ざかり。いつしか殆ど赴くこともしなくなった。
それでも時折、折に触れて逢いたくなっていたのだが、モンドと璃月の国境で何度引き返した事か。
そしてその間も鍾離から何のアクションもなかったことがウェンティの中で自分達の関係は終わったのだと結論付けることになった。
当時の気持ちがぶり返してきて、腿に置いた手を握りしめるウェンティ。
するとそんなウェンティの耳に、盛大な溜め息が届いた。このタイミングでそれは流石に酷くないだろうか?
悲しみから一転して怒りを覚えるウェンティが顔を挙げれば、頭を抱えている鍾離の姿が目に入った。明らかに疲弊しているその姿に、怒りが引っ込みまた悲しみが押し寄せてきた。
そんな風に面倒がらなくてもいいじゃないか……。と小声で愚痴を零してしまうウェンティ。まぁ、鍾離の耳には届いているだろうが、これぐらいの仕返しは許してもらいたい。
「面倒などではなく、何故そんな誤解が生じているのか理解できないだけだ」
「だから、理由は今言ったでしょ」
「それは俺が恋人としてお前を扱っていないという類の言葉のことか? それとも、お前に興味が無くなったというふざけた理由か? ……まさか、俺が心変わりしたと本気で言っているのか?」
「だから! 全部! 今言った全部の理由で、もうボク達は恋人じゃないんだなって思って―――」
「ふざけるな。俺は一瞬たりとも心変わりなどしていないし、お前に興味が無くなったなどあり得ない。大体、恋人として扱う云々はお前が『待て』と言ったからだろうが」
もう良いと言葉を遮る鍾離が纏う風は荒れ狂っていて、怒っている事は明らかだ。
だが、彼が口にした最後の言葉に、ウェンティは恐れよりもどういうことだと逆に説明を求めていた。
「まさか忘れて居るのか? 昔、俺がお前を抱こうとした時に罵倒してきたことを」
驚いたウェンティに驚きの顔を返す鍾離は、はぐらかす気か? と疑いの目を向けてくる。
だが、何のことか分からないウェンティは勢いよく首を横に振り、本当に何のことか分からないと眉を下げた。
ウェンティには嘘を吐いている様子はなく、むしろ縋るような眼差しで鍾離を見つめている。
そのことは彼も気付いたのだろう。纏っていた怒りを一旦収めて鍾離の視点の回想を語ってくれた。
それは今から二五〇〇年以上前のこと。
愛おしい存在と晴れて恋仲になって暫く経った頃、鍾離――モラクスは抱き合い口づけを交わすだけでは物足りなくなっていた。
本当なら恋仲になって直ぐにでも身も心も自分のモノにしてしまいたかったが、生きた年数は長くとも己の恋人が純真無垢だという事は分かっていた為、欲を抑え怖がらせないよう努めていた。
だが、我慢は所詮我慢でしかなく、いずれ堪えられなくなる時が来る。
そしてその時が訪れてしまい、モラクスは恋人を愛したいという衝動のまま、ウェンティを―――バルバトスを押し倒した。
純真無垢と言えども同じ想いなわけだ。拒まれるわけがない。
そう高を括っていたモラクスの期待は、あっけなく砕かれた。
バルバトスは渾身の力で拒み、突然のことに泣いて喚いて『大嫌い』とまで言われてしまった。
その言葉を聞いたのは後にも先にもこの時だけだが、今も思い出す度鍾離の胃をキリキリと締め上げるトラウマ的出来事だった。