TREMOLO [ANNEX]

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二五〇〇年越しの夜



 『凡人』として鍾離が住まう家に連れ帰られたウェンティは、真っ直ぐ寝室に連れ込まれ、気が付けばベッドの上で悪友改め恋人を見上げていた。
 展開が早すぎると思う反面、随分長い歳月待たせてしまった申し訳なさ半分、もう半分は二度と得られないと思っていた彼のぬくもりを感じられる事への期待だった。
「互いの想いを改めて確認もできたことだ。……そろそろ『待て』を解いてくれないか?」
 普段の彼らしからぬ何処か余裕のない声と表情。
 自分を見下ろす鍾離に、ウェンティの心臓はおかしくなったのかと勘違いしそうなほど早く鼓動していた。
「ベッドに押し倒す前に聞くべきじゃない?」
 平静を装うも、隠しきれない。
 上擦った声と表情に、鍾離には自分の心など全てバレているだろう。
 いつもの彼なら、こんな自分を見れば愉快だと言わんばかりに揶揄うような言葉を投げかけてくるに違いない。でも今までのそんな彼の態度の全てに『愛』が含まれていたと知ってしまった後では、言葉全てが愛おしいとすら思えるから不思議だった。
 そしてそれは鍾離も同じだったのか、本心を隠すことなく吐露してウェンティを求めた。
「なるほど。許可を得た俺に行儀よく寝室までエスコートする余裕があるとお前は思っているわけか」
「無いの?」
「あるわけないだろうが。本当なら今すぐにでも喰らいついてやりたいぐらいなんだ」
 想いは同じだと伝わっている。本来なら、許可を得ずとも愛し合っても良いと思われるシチュエーションだ。
 しかし、それでも明確な『言葉』を求められるのは、過去のトラウマ故だろう。
 よほど自分が発した『大嫌い』という言葉が堪えたようだと笑うウェンティは、こんなにも一途に想われていた事に気付かなかった自分こそが鈍感だと思うのだった。
「凄い。あの鍾離先生をこんな風にしちゃうなんて、ボクってすごく魅力的なんだね?」
「改めて確認せずとも、お前程魅力に溢れた存在はこの世には居ない。お前こそテイワットの至高の―――」
「わーわーわー! もう! 止めてよ!! 君の詩は直接的で聞いてて恥ずかしくなるんだからね!?」
 これ以上鍾離の愛を摂取するのは危険だ。何も取り繕うことができず、みっともなく泣いてただ彼への愛を囀ることになってしまう。
 慌ててその口を塞ぐように手で押さえれば、掌に落ちてくる口づけ。
 恋人の目は欲を孕み、眼差しからも『愛している』と伝えてきた。
「詩で愛を告げられる余裕など無い。頼むから、『いい』と言ってくれ」
 許可を求め懇願する鍾離。かつて岩の魔神モラクスとして璃月に君臨していた最古の魔神も、愛する者の前ではその想いを求める憐れな存在になってしまうようだ。
 彼の想いに胸がいっぱいになり、言葉が詰まる。
 だが囁かれる愛の言葉にウェンティが纏っていた虚勢は崩れ、恋人と同じく彼の愛を求める憐れな存在へと堕ちるのだった。
「愛している、バルバトス」
「っ、バカ……。でも、ボクも愛してる、モラクス。待たせてごめんね? エッチしよ……?」
 これが夢でないとこの体躯に刻んで欲しいと鍾離の首に腕を巻き付けるウェンティは、齎される口づけに心を蕩けさせる。
 唇を割って入って来る舌を迎え入れながら、ずっとこうしてキスしたかったと見ない振りをしていた自分の本音を掬いあげるウェンティ。
 角度を変えて何度も何度も齎される口づけはどれも幸せで心を満たし、自然と目尻からは涙が零れ落ちた。



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2024-02-18 公開



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