「お前の自由を制限したいわけではないが、だがそれがお前の贖罪だと言うのなら、酒の席には必ず俺を連れて行け。お前がまた誰彼構わず愛想を振り撒かないか見張っていてやる」
「分かった。……でも、『誰彼構わず愛想を振り撒く』って酷くない?」
「本当に何も覚えていないのか、お前は」
もぞもぞと身じろぎ顔を挙げれば、苦笑交じりの精悍な顔が目の前に。
その格好良さに改めて鍾離に見惚れるウェンティだが、「目の前で浮気をしておいて」と言われればどういうことかと眉を顰めてしまうというものだ。
「あの頃から俺を愛していたのだろう? ならば、『浮気』以外に何と言えと?」
「ちが――っ、いや、モラクスのことが好きなのは違わないけど! けど、そうじゃなくて、『浮気』って、ボク何したの!?」
君に頭からお酒をかけただけじゃないの!?
そう狼狽えるウェンティ。鍾離は苦笑を濃くして、酒を掛けられた程度で怒り狂ったりしないと言ってきた。
その程度で怒る器の小さい男だと思われていたのかと言われてしまえば、謝るより他にない。
だが、謝りながらもウェンティは自分は一体何をしてしまったのかと不安を覗かせる。
それに気付いた鍾離に再び抱きしめられ、もう一度彼に抱きつくと当時の自分の失態がどんなものであったか教えて欲しいと乞うウェンティ。
知らされたのは、彼が怒り狂って当然の真実だった。
「酒に酔ったお前はブエルやバアルに抱きつき、嫌がる彼女達に口付けていた。『大好きだ』と言いながらな」
「う、うそ……」
「嘘なものか。その様子では、バアルゼブルに粛清されかけていたのも覚えていないだろう?」
「うん……、全然、覚えてない……」
嫌がる姉の頬に無理矢理口付ける酔っ払いに双子の片割れは剣を抜いて一悶着あったらしいが、何一つ覚えていないというウェンティの顔は真っ青だ。
彼女が自分を見る度顔を顰める理由が漸く分かったと肩を落とし、ブエルやバアルに酷いことをしたと反省する。
「勿論、お前と恋仲だと思っていた俺も怒り狂ったぞ」
「だ、だよね……」
「そして、どういうつもりだと彼女達から引き剥がす俺にお前は『大嫌い』と言い放ち、手に持っていた酒を俺の頭にぶちまけたと言うわけだ」
あの時何があったか理解できたか?
そう尋ねてくる鍾離は意地悪だ。
聞かされた真実の数々にウェンティは卒倒しそうになる。本当に、鍾離には何度土下座してもし足りないぐらいのことをしていたのだから。
「ごめっ、モラクス、本当に、本当にゴメンっ」
「もういい。……俺も少々大人気なかった。あの時きちんとお前と向き合わなかった俺にも非はある」
「無いよ!? モラクスが悪かったことなんて、今の話の何処にあるの!?」
「いや。あの時無理矢理にでもお前は俺のモノだと分からせていればこんな遠回りはしなかっただろう?」
あの時互いの想いが同じだと知っていれば『仕置き』で済んだことだと笑う鍾離。
彼は、過去のことはもうどうでもいいと優しく抱きしめ、今はもうお前は俺のモノだろう? と尋ねてきた。