できることなら、彼と友達になりたかった。でも、それが叶わぬ願いだという事はもう十二分に分かった。
これほどまでに嫌われているとは思っていなかっただけに、どう頑張ってもショックは大きい。
改めて突き付けられた現実に、何か熱いものがこみ上げてくる。それが鼻の奥を熱くするから、このままでは彼の前で醜態を晒すことになってしまうと慌てるウェンティ。
嫌っている相手が泣いて縋ってくるなんて、どう考えても迷惑だろう。
もう既に嫌われているが、それでもこれ以上嫌われたくない。
ウェンティは必死に平静を装い「じゃあね、凡人生活楽しんで」と彼の腕から逃れようとした。
これで、終わり。悪友としても傍に居ることは許されなかった彼への想いは、自身の胸の奥深くに封印してしまおう。
モンドに帰ったらトワリンを呼び出して記憶が無くなるぐらい呑むぞと心に決めたウェンティ。
しかし、彼のもとから去ろうとした自分の腕は、他ならぬ彼に掴まれたままだった。
「……鍾離先生?」
痛みを覚える程強い力で掴まれる腕に、ウェンティは今日初めて動揺を露わにした。
これ以上嫌われる前に早く彼のもとから立ち去らなければ。そう思う一方で、引き留められているように感じてしまい、憐れなまでに期待してしまう自分がいた。
勘違いするなと理性が警鐘を鳴らし、早くこの腕を振りほどいて立ち去れと叫んでいる。
でも、できるわけがない。だってどう取り繕おうとも彼の傍に居たいと思う心は誤魔化せないのだから。
募る想いに、平静を装うことができない。
何故引き留めるのかと問いただしたいが、真実を知ることが怖くて彼の通り名を口にすることしかできなかった。
見上げる精悍な顔は相も変わらず難しいもので、眉間の皺も健在だ。
そんな顔をするならさっさと腕を離せばいいのにと思うものの、それを口にすることですんなり解放されたら立ち直れない気がした。
しばしの沈黙が二人の間に流れ、居心地が悪い。
ウェンティの眼差しは鍾離へと注がれているが、視線を逸らしている鍾離とそれが交わることは無くて、胸がズキズキと痛んだ。
これ以上は耐えられない。
そう思ったのは、どれぐらい時間が経過した後だろう。数秒だろうか。数分だろうか。
はっきりとは分からないが、いずれにせよウェンティにとっては気が遠くなる程永い時間に感じてしまったのは確かだ。
モンドに帰る。そう口にすれば良いだけだと自身を奮い立たせるウェンティが意を決して別れを告げようとしたその時、沈黙を破ったのはずっと口を閉ざしていた鍾離の方だった。
「璃月の―――っ」
「え……? 何……?」
「モンド程ではないが、璃月の酒も美味いものばかりだ」
「う、うん。それは、知ってる、けど……」
「今から酒を呑む。だから、付き合え」
所々言い淀みながらも真っ直ぐ目を見て紡がれた言葉。
ウェンティは鍾離の口からでたそれが信じられなくて、驚きのあまりぽかんと口を空けて彼を凝視してしまう。