「えぇ? よんらのは、もりゃくしゅれしょ?」
「……何を言っているか分からん」
首に腕を巻きつけしがみついてくる酔っ払いはケラケラと笑い、酒臭い。
呂律は回っておらず、言葉は不明瞭で何を言っているのか理解し辛い。これでは意思疎通が困難だ。
どうしたものかと眉を顰める鍾離は、少し迷ったがウェンティを正気に戻すことにした。
「バルバトス」
「なーにぃー?」
名を呼べば素直に応える酔っ払い。
顔を上げろと言わずとも此方を見上げてくる姿は何とも愛らしくて、もう少しこのままでもいいのでは? なんて思ってしまう。
それでもやはり意識が鮮明でない相手と言葉を交わすのは疲れるし虚しいから、鍾離は酒気を纏う唇を塞ぐのだった。
「んっ、んん……」
(口づけだけでも此方が酔っぱらいそうだ)
舌を絡める深い口づけは思った通り酒の味がした。
加減しらずの呑兵衛には困ったものだと苦笑を漏らす鍾離。
酒好きの恋人を正気に戻すため、彼はウェンティの身体を巡る酒気を己に取り込んでゆく。
流れ込んで来る酔い。それが自身の身体に巡る前に分解してゆく鍾離は、『人』ならざる者で良かったと思ってしまう。
ウェンティが纏う酒気は、『人』の許容量を遥かに超えていたからだ。
「ん……、…………ん? んんんっ!?」
どれほどこうしていただろうか。
大人しく――、いや、積極的に口づけに応えていたウェンティは、漸く正気を取り戻したようだ。
凍りついたように身体を強張らせ、そうかと思えば首に回していた腕を解いて身体を押し放そうとしてきた。
「ぷはっ……、な、なに!? 何してるの!?」
「見ての通り、口づけだが?」
「そうじゃなくて!! なんで!? どうして君が此処に居るの!?」
というか、此処何処!?
喚くウェンティ。どうやら彼は、酔いは醒めたようだが、自分の状況が理解できずに混乱しているようだ。
鍾離は手のかかる恋人に肩を竦ませ、とりあえず降ろしてと暴れるウェンティを地面に立たせてやった。
「……こ、此処って、もしかして璃月……?」
エンジェルズシェアで呑んでたのに、なんでボク、璃月に居るの……。
両手で顔を覆い隠して項垂れるウェンティ。その耳は真っ赤で、どうやら記憶は無くとも『何故』かは分かっているようだ。